現在、年間の買取額で言えばファクタリングの中でも「2社間ファクタリング」の取引額が増えてきています。
しかしながら、2社間ファクタリングは様々な要因から「あまりおすすめできない」手法であると言えます。
今回は、その理由とコスパの良い「3社間」への乗り換え方を解説していきます。
なお、今回の記事には3社間ファクタリングを無理に勧める意図はありません。双方のメリットを吟味し、最終的に必要であれば2社間ファクタリングを選ぶべきでしょう。
目次
2社間ファクタリングのメリットは?
確かに、2社間ファクタリングには明確なメリットがいくつかあります。
詳細な説明は省きますが、以下の点です。
- 現金化のスピードが非常に早い
- 審査が非常に緩い
- 売掛先に知られることがない
これらは、3社間ファクタリングや他の資金調達手段が持たない強みであり、ニーズと一致すれば確かに強力な解決手段になり得ます。
3社間ファクタリングのメリット
しかし、それでも私は「3社間ファクタリングの方が良い」と考えます。その理由を3つほど、今から説明していきましょう。
理由1:手数料相場が3社間ファクタリングの3倍弱
2社間ファクタリングの手数料相場は、だいたい10%~20%。
そのうち、ファクタリングのボリュームゾーンである300万円前後の債権買い取りであれば、手数料はだいたい15~18%の範囲に収まります。
一方で、3社間ファクタリングの手数料は同じ条件なら5~7%まで下がります。(会社によっては5%以下)
このことから、2社間ファクタリングの手数料相場はだいたい3社間の3倍と考えて良いでしょう。
2社間ファクタリングの手数料が高い理由
2社間ファクタリングの手数料が高い理由は、リスクの高さと諸経費の高さにあります。
ここで2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの取引の流れの違いを説明しておきましょう。
3社間ファクタリングでは、売掛金は売掛先から直接ファクタリング会社に支払われるのが通常です。
一方、2社間ファクタリングは、売掛先に通知しない都合上、売掛金を一旦依頼者に支払う必要があります。
通常通り入金してもらった売掛金を、ファクタリング会社にそのまま渡すことでファクタリングが完了するのです。
だが、ファクタリングを依頼する会社は得てして資金繰りに困っていることが少なくありません。
信じられないと思うかもしれませんが、手元に来たこの売掛金を、ファクタリング会社に渡さず行方をくらます経営者は少数ながら存在します。
恐らく、運営資金に困っての行動だとは思いますが、この段階では契約が終わって債権が譲渡されている、つまり売掛金はファクタリング会社のものです。
売掛金をファクタリング会社に渡さず自社で利用する行為は、横領罪にあたります。
横領が発覚した場合、ファクタリング会社の対応コストは増え、回収できなかった場合その案件はファクタリング会社が損失を被ることになってしまいます。
2社間ファクタリングは不渡りリスクが高い
また、売掛先を介さないファクタリングでは、支払い元である会社の情報も3社間より細かな調査が難しくなってしまいます。
ですから、相対的に不渡りになる可能性も上がってしまい、結果として2社間ファクタリングの手数料上昇を招いています。
そのため、2社間での手数料上昇はある意味避けようのないリスクであり、同時に2社間の利用をおすすめしない理由でもあります。
もう一つの原因である諸経費については、本稿に直接関係の無い内容なので、以下の記事でまとめています。
理由2:利用回数が多くなればなるほど手数料負担が激増する
理由1で、2社間ファクタリングの手数料は買取額300万円でだいたい17%前後だと説明しました。
ただし、1度ファクタリングを実行した場合、翌月の入金はゼロになってしまいます。
ですから、資金繰りが改善しなければ次月以降もファクタリングに頼らなければいけないというケースが出てきます。
この状況に陥っている経営者は意外と少なくなく、2社間ですとこの場合毎回17%の手数料が派生してしまいます。
2社間ファクタリングで何回もファクタリングを行うとどうなるか?
仮に、手数料15%のファクタリングを半年間行った場合、年利換算するとどうなるでしょうか。
なんと、年利90%となってしまうのです。
通常、融資の場合ですとノンバンクのビジネスローンを使った場合でも手数料は20%を越えません。
ご存じかと思いますが、融資は利息制限法によって利息の上限が最大でも20%と定められているためです。
しかしながら、ファクタリングは融資ではありません。ですから、よく考えて利用しなければ年利が100%を越えてしまうことも珍しくはないのです。
これでは、経営再建もキャッシュフロー改善も逆に遠のいてしまい、経営の危機すら見えてきてしまいます。
理由3:金融機関や「でんさい」などの選択肢が取れない
また、もうひとつネックとなるのが「候補となる会社・選択肢の減少」です。
近年では、2社間ファクタリングを専門・あるいは得意とする会社も増えてきていますが、3社間ファクタリングまで視野に入れるなら候補はさらに広がります。
たとえば、金融機関はそもそも2社間ファクタリングを取り扱っていませんし、2社間ファクタリングの場合ですと「電子債権」を使ったファクタリングもできなくなってしまいます。
電子債権を使ったファクタリングの詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。
電子債権を使ったファクタリングは3社間のみ
電子債権は、導入する段階で取引先同士の合意が必要となるため、実質的に3社間ファクタリングのみとなっています。
この電子債権を使ったファクタリングは、会計業務の負担削減にも繋がりますし、ファクタリングも金融機関を介して行われますので信頼性は非常に高いです。
ですので、3社間ファクタリングを許容している取引先であれば、お互いのメリットを増やすための電子債権導入にも踏み切りやすくなります。
一方で、売掛先が債権譲渡(ファクタリング)を禁止しているような2社間ファクタリングの場合ですと、電子債権の導入が難しくなってしまいます。
この点で、3社間ファクタリング(が可能な関係性)は有利だといえます。
3社間であれば金融機関も候補に入る
電子債権の項目でも触れましたが、3社間ファクタリングは金融機関もサービス提供しているため、低い手数料でのファクタリングが可能です(その分、民間会社と比べて審査難易度は上がりますが)。
なるべく、民間企業よりも金融機関を使いたいという取引先も居るでしょうから、やはり候補が多いのは重要です。
このように、2社間ファクタリングには利用すべきではないといえる点(主に手数料面)があります。
とはいえ、2社間ファクタリングを利用しなければならない状況というのは、余裕のあることを言っていられない状況であることは確かです。
続いて、そのような状況を長期的に立て直していくための3社間ファクタリングへの持ち込み方を説明していきましょう。
3社間ファクタリングへ持ち込む方法を解説
3社間ファクタリングの交渉材料として、以下のようなものがあります。
- 取引先に共に交渉してくれるファクタリング会社を探す
- 電子債権システムへの移行を勧める
それでは、順に解説していきましょう。
ファクタリング会社と共に交渉する
3社間取引を専門とする会社では、取引先への交渉や説得に同行してくれる所もあります。
専門的な知識を持つファクタリング会社と共に交渉することで、3社間取引に応じてくれる可能性も高まります。
電子債権システムへの移行
会計業務を「電子債権」に移行したいと申し出るのも良いでしょう。
「でんさい」や「Tranzax」などの電子債権サービスは、会計業務の一元化や債権の分割が可能となるなど、ファクタリング目的に限らない様々なメリットがあります。
移行に時間を要するのが難点ではありますので、今すぐファクタリングしたいという状況に向いた方法ではありませんが、一考の余地があります。
まとめ
2社間ファクタリングは、スピード面や審査の緩さなどのメリット以上に、手数料面で見たコストパフォーマンスが悪い手法です。
ですので、できれば使うに越したことはなく、可能であれば3社間ファクタリングの交渉をすべきだといえるでしょう。
3社間ファクタリングへの交渉は、3社間を得意とする会社に同行してもらう、電子債権システムの導入を促すなどの方法があります。
まずは3社間を検討、交渉した上で、どうしても無理な場合のみ2社間ファクタリングを検討するようにしましょう。
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