債権譲渡

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ファクタリングを理解する上で知っておきたい債権譲渡について、ファクタリングとの違いなどを詳しく解説します。

債権譲渡を行うメリットや債権譲渡をする際に注意しなければいけない「二重譲渡」や「債権譲渡禁止特約」についても解説しますので、ファクタリングの前にご参考ください。

債権譲渡とは?

ネクタイと小物

債権譲渡とは、債権の内容(支払い期日・金額など)を変更せずに、債務者と債権者以外の第三者に債権を移転(=譲渡)することです。

主に弁済能力のない債務者から、債権を回収する目的や債権の買い取り(ファクタリングを含む)のために用いられる方法です。

債権譲渡契約が行われると、債権に付随してその他の権利も同時に譲渡されます。

具体的には、

  • 抗弁権
  • 利息債権
  • 抵当権
  • 保証債権

などがその一例として挙げられます。

債権譲渡が行われると、債権を受け取った側は譲受人、債権を譲渡した側は譲渡人と呼ばれるようになります。

債権譲渡の手順

指を差すひと

次に債権譲渡はどのように行われるのかを見ていきましょう。

①債権譲渡契約

譲受人と譲渡人の間で、債権譲渡契約を締結します。

当然ながら、双方の同意のもとでないと契約することはできません。

債権譲渡契約を結ぶには、契約書が必要です。

ただ債権譲渡契約を結んだからといって、譲受した債権から全額の弁済を受けられるかは保証されていません。

譲受した債権が不良債権化することも考えられます。

そのため契約書には、弁済が不足・不可能になった場合の取り決めも明記しておきましょう。

また契約書に効力を持たせるために、弁護士に依頼したり内容証明郵便、公証役場などの確定日付をつけてもらうようにしてください。

②対抗要件の取得

債権譲渡契約では、対抗要件の取得が絶対条件です。

対抗要件とは、譲受人と譲受人以外の第三者に対して、権利の関係を主張するために必要な要件のことです。

対抗要件は動産と不動産では、要件が異なりますが、売掛債権などの動産の場合は以下のように定められています。

【民法第178条】
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

特に譲渡された債権の債務者に対して、債権譲渡が行われたことをしっかりと示すために、対抗要件は必ず取得しなければいけません。

対抗要件を取得していないと、債権の二重譲渡状態になってしまいます。

【参考記事】ファクタリング契約時の架空債権と二重譲渡は絶対禁止

対抗要件を取得するには、譲渡された債権の債務者に通知を行い、承諾を得る必要があります。

そのためまずは債務者に対して、債権譲渡通知を行いましょう。

債権に対する債務者の数が多く、債権譲渡通知を発送のが困難である場合は、債権譲渡登記制度を利用して、対抗要件を得ることも可能です。

ただ債権譲渡登記には一回あたり7500円の登録免許税がかかります。

内容証明便のコストなどと比較して、選択するようにしてください。

債権譲渡通知を行い、債務者からの承諾を得る際には、「確定日付がある証書」でなければいけません。

確定日付がある証書として有効なものは、「公正証書」・「内容証明郵便」などが挙げられます。

債権譲渡のメリット

サイコロ

債権譲渡は主に、弁済能力のない債務者から債権を回収するために行うものです。

そのため債権の未回収リスクを抑えることができ、ひいては資金ショートを防ぐことができます。

長期間に渡って不良債権を持ち続けることは、資金調達のコスト(債務者への督促・競売・差し押さえなど)が回収できないということです。

それが債務譲渡をすることによって、コストをカットすることができます。

また、不良債権を売却すれば、不良債権が会社のバランスシートから無くなります。

したがって会社の財務状況を改善することができ、金融機関などからの信用も向上するという利点も債務譲渡にはあります。

債務譲渡時の注意点

駐車場

債務譲渡を行う時には、注意しなければいけない事柄もあります。

次に見ていきましょう。

①二重譲渡がされていないかどうか

債務譲渡契約の前に、二重譲渡がされていないかどうかを必ず確認するようにしてください。

すでに債務譲渡が行われている債権の場合、他社が対抗要件を取得しているため、債務譲渡契約を交わしても債権を施工することはできません。

債権が二重譲渡されているかどうかは、債権譲渡登記を法務局に確認することによって可能です。

具体的には、登記事項概要証明書・概要記録事項証明書を見れば、二重譲渡の有無が分かります。

②譲受人と債務者が双方に債務を所有していないかどうか

譲受人と債務者が双方向の取引関係にあり、互いに債権を所有している場合は注意が必要です。

双方向の債権は、相殺することができます。

そのため債権譲渡をしても、相殺によって支払われるはずだった売掛金などが支払われない、もしくは減額となることが考えられます。

③債権譲渡禁止特約は存在するかどうか?

債権譲渡禁止特約は、その名の通り債権の譲渡を禁止した特約(=合意)です。

債権譲渡禁止特約が交わされている場合、債権譲渡をすることはできません。

万が一、譲渡禁止となっている債権の債権譲渡契約をしてしまうと、契約は無効となる可能性があります。

ファクタリングと債権譲渡の違いは?

バランス

債権譲渡について、詳しく理解していただいたところで、ファクタリングと債権譲渡の違いについて説明していきましょう。

厳密に言えば、ファクタリングは債権譲渡の一種です。

ただファクタリングは譲渡ではなく、債権の売却であり、資金調達が主な目的であるという点では全くの別物とも言えます。

また債権譲渡では、特定物債権や種類債権、選択債権なども譲渡の対象です。

一方のファクタリングで売買される債権は基本的には売掛債権となります。

加えて、債権譲渡をする場合には契約書の作成依頼など弁護士を交えて実行しますが、ファクタリングでは弁護士や司法書士などの力を借りなくとも利用することができます。

その代わり、ファクタリング利用時には売掛債権の買い取りを行うファクタリング業者を利用する必要があります。

ファクタリング利用時にも債権譲渡禁止特約に注意!

ファクタリングを利用する際にも、債権譲渡禁止特約に注意しなければいけません。

厳密に言えば、債権譲渡禁止特約が結ばれている売掛金でも、ファクタリングを実行することは可能です。

かつては債権法により、譲渡禁止特約が結ばれている債権の譲渡は「無効」になっていました。

それが2017年の民法改正以降、譲渡禁止特約付きの債権であっても譲渡ができるようになりました。

譲渡禁止特約を結んでいても、ファクタリングは可能ですし、事実上契約違反ではないのです。

しかしながら、譲渡禁止特約には「第三者に二重譲渡された際の対抗要件」としての機能が残っています。

譲渡禁止を明言しておけば、債権の譲渡による混乱を防ぐことが可能であり、もしもファクタリングを実行してしまうと混乱が生じてしまいます。

譲渡が無効にならなくても、債権の譲渡によって契約打ち切りとなる可能性も充分あるためです。

特に大企業では、債権の譲渡をすべての下請け企業に認めていると、支払いミスや債務管理の手間が発生してしまうため、基本的に債権譲渡を是としていません。

2社間取引ならば債権譲渡が必要ない

債権譲渡禁止特約が結ばれてる売掛債権をファクタリング(=売却)してしまうと、契約違反とはなりませんが、取引先との関係など、厄介な事象を引き起こしてしまいます。

それでも、2社間取引を利用すれば、問題なくファクタリングをすることが可能です。

2社間取引とは、ファクタリング会社と利用企業の2社間のみで行うファクタリングです。

取引先にファクタリングの事実を知らせることがなく、債権譲渡通知をする必要がありません。

2社間取引では、債権譲渡登記の代わりに内容証明郵便により、通知内容を公的に認めてもらうことで、債権譲渡を行なっています。

またファクタリング会社によっては、債権譲渡登記自体を不要とするケースもあり、このような場合であれば、債権譲渡にはなりませんので、問題なくファクタリングが可能です。

実務的には、取引先から債権譲渡の承諾を得るのはリスクが大きいことで、ファクタリング利用企業の多くは2社間取引を利用することが大半です。

ただ2社間取引は、手数料が高いというデメリットがある点は頭に入れておかなければいけません。

まとめ

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債権譲渡とは、債権を第三者に譲渡することを言い、ファクタリングも債権譲渡の一種に分類されます。

債権譲渡をすることで債権の未回収リスクを抑えることができ、資金ショートを防ぐことが可能です。

ただファクタリングを含めて、債権譲渡をする際には二重譲渡や債権譲渡禁止特約に注意しなければいけません。

それでもファクタリング会社と利用企業のみの間で行われる2社間取引であれば、債権譲渡登記や譲渡通知が不要です。

そのため取引先との関係性を壊したくないという場合には、2社間取引でのファクタリングを推奨します。

【関連記事】ニーズが高まる「2社間ファクタリング」とは?