代表的な資金調達である廻し手形とファクタリングのそれぞれのメリット・デメリットを元に両者の4つの違いについて解説していきます。
利用の際には、両者を比較して検討するようにしてください。
目次
廻し手形(裏書手形)とは?
企業間の取引決済においては、現金支払いではなく、約束手形(=支払い証明書)を発行するのが一般的です。
廻し手形とは、他社から振り出された手形を取引先への支払いのために譲渡することです。
別名、裏書手形とも呼ばれています。
廻し手形を利用することで、他社からの支払いを受けておらず取引先への支払いが困難である場合でも支払いを済ませることができます。
廻し手形のメリット
廻し手形のメリットとしては、取引先への支払いのためのキャッシュがない場合でも、手形を有していれば支払いを済ませることができるという点です。
また割引手形のような審査はなく、割引料が引かれることもありません。
【参考記事】手形割引からファクタリングに切り替えるべき5つの理由
廻し手形のデメリット
廻し手形のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 取引先に断られる可能性がある
…手形の振出先の信用情報が分からないため - 時間がかかる
…取引先が手形の振出人の信用調査を行う場合、時間がかかる
(この手間と時間が廻し手形が断られる理由の1つ) - 不渡り時には支払い義務がある
…振出人が不渡りを起こした場合、償還請求がかかり支払い義務が発生する
実は廻し手形は上記のようなデメリットがあり、メジャーな支払い方法ではありません。
「取引先が承諾しない」、「償還請求権がある」というリスクがあり、手形管理も困難です。
ファクタリングとは?
一方のファクタリングとは、「約束手形」を含んだ売掛金を、金融機関やファクタリング業者に「売却」して現金化し、資金調達することを言います。
ファクタリングは借入ではなく、資産の売却であるため利用にあたって審査が緩いという特徴があります。
そのため信用情報が低い企業や銀行融資を断られてしまった経営者の方でも、問題なく利用することができます。
また2社間取引であれば、最短即日での資金調達も可能です。
利用方法としては、ファクタリング会社に売掛債権を売却し、手数料を引いた売掛金を入金してもらいます。
状況によっては「債権譲渡登記」も行うことで、ファクタリングが完了します。
【関連記事】ファクタリングの債権譲渡登記とは?売掛先や銀行には知られない?
ファクタリングのメリット
ファクタリングのメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 保証人・担保が不要で利用可能
- 債務超過・税金滞納・赤字決算でも利用できる
- 信用情報に記録されない
- 最短即日での資金調達ができる
先にもお話しした通り、ファクタリングは融資ではありません。
そのため審査が簡易的であり、上記のようなメリットが派生します。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングのデメリットは、「手数料の高さ」と「悪徳業者の存在」です。
ファクタリングにかかる手数料は2社間取引・3社間取引を通じて、3%~30%程度にも上ります。
売掛金額や支払いサイトなどにも左右されますが、銀行融資や手形割引などに比べると、圧倒的に高い手数料です。
またファクタリングは利息制限法の適用外であり、高い手数料を要求しても貸金業法違反となることがありません。
そのため詐欺グループやヤミ金が参入しやすく、悪徳業者が少なからず存在します。
そのためファクタリング会社を選択する際には、よくよく注意しなければいけません。
【関連記事】ファクタリング手数料の相場と内訳を分かりやすく解説
ファクタリングと廻し手形の違いを解説
ファクタリングと廻し手形はどちらも資金調達というカテゴリーで括られることもあります。
それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で違いについて見ていきましょう。
主な違いとしては、以下の点が挙げられます。
- 償還請求権の有無
- 実行スピード
- 確実性
- 手数料
順番に見ていきましょう。
①償還請求権の有無
前述の通り、廻し手形のデメリット・リスクとしては償還請求権があることが挙げられます。
もしも振出人が不渡りを起こしてしまい、廻し手形が現金化できないと償還請求権がかかり、自社に支払い義務が発生します。
一方のファクタリングは償還請求権がありません(=ノンリコース )。
そのためもしも売却した売掛債権が不良債権化した場合でも、ファクタリング会社に弁済をする必要が無いのです。
②実行スピード
ファクタリングと廻し手形には実行スピードにも違いがあります。
廻し手形を行う場合は、取引先が手形の振出人の信用調査を行い、その上で承諾するかどうかを決定します。
そのため成立するのに時間がかかってしまいます。
一方のファクタリングは、よりスピーディーに実行可能です。
特にファクタリング会社と自社の2社間のみで行う2社間取引の場合は、売掛先に通知する必要がないため最短即日での資金調達ができます。
③確実性
振出人の信用情報が不透明・信用調査を行わなければいけないといった理由から、現金ではなく廻し手形による支払いを取引先に断られてしまうケースは多々あります。
そのため廻し手形は確実性が非常に低いと言えるでしょう。
一方のファクタリングは、売掛債権を有していればほぼ確実に資金調達をすることができます。
2社間取引であれば売掛先からの承諾を得る必要もありません。
したがってファクタリングの方が資金調達法としては、確率が高いと言えます。
④手数料
ファクタリングには手数料がかかる一方で、廻し手形には手数料がかかりません。
割引料も発生しないため、廻し手形の方が損はしないと言えるでしょう。
ファクタリングの最大のデメリットは手数料の高さにあり、頻繁に利用してしまうと資金繰りが改善されるどころか圧迫されてしまいます。
結論:リスクが低いのはファクタリング!
違いについて比較してみてお分かりの通り、ファクタリングの方が廻し手形よりもリスクは低いと言えるでしょう。
廻し手形の場合は譲渡した手形が不渡りとなるリスクがあり、償還請求をされてしまう恐れがあります。
また取引先から「資金繰りが厳しいのだな」と思われてしまい、信用を失ってしまうリスクも考えられます。
結果として、取引中止になってしまうことも珍しくはありません。
それと比べると、ファクタリングは匿名性の高さや確実性から、リスクが低いと言えます。
一方で、ファクタリングにかかる手数料は忘れてはいけません。
ファクタリングは手数料がかかってしまうため、一時的な資金繰り改善にはなるものの、長期的なキャッシュフローの改善には適していません。
時間がかかっても取引先からの理解と承諾を得られるのであれば、廻し手形を利用した方がいいでしょう。
ただ手数料が3%~7%と低い3社間取引であれば、ネックである手数料を抑えることが可能です。
【関連記事】2社間ファクタリングで審査に通過&手数料が安くなるコツとは?
まとめ
まとめると、廻し手形は以下の通りです。
- 他社から振り出された手形を取引先への支払いのために譲渡すること(別名:裏書手形)
- 資金がない場合でも取引先への支払いを済ませることができる
- 償還請求権があり、取引先から断られる可能性がある
- ファクタリングに比べるとリスクが高く、確実性にかける
- 手数料はかからない
ファクタリングと廻し手形、どちらを利用するかは総合的に判断し、比較検討するようにしてください。
また時には手形割引など、その他の資金調達法も検証することが大切です。
【関連記事】ファクタリングと手形割引はどう違う?5つの違いを解説
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