金融とITを組み合わせた「Fintech」の波はファクタリング業界にもやってきています。今回は、「電子記録債権を活用した新しいサービス」の提供に取り組むTranzax(トランザックス)株式会社(以下、Tranzax社)について、ファクタリング業界の視点から紹介。
- Tranzaxのサービス内容
- 既存のファクタリングとの違い
など、Tranzax社がファクタリングに及ぼす影響がどうなのかを解説していきます。
目次
Tranzaxは何がどう凄い?でんさいとの違いを説明
Tranzax社は、ベンチャーながら「電子記録債権の利用」を元にしたサービスを展開する企業です。
国から指定を受けた「電子債権記録機関」でもあり、同様の指定を受けているのは国内5社のみ。
そのうちほとんどはメガバンクなので、Tranzax社は金融業界、特に近年注目を浴びるFintech企業の中ではかなり異彩を放つ存在であるといえるでしょう。
Tranzax社が提供するのは、「電子記録債権」を中心とした、債権買い取りシステムや記録システム。
電子記録債権を活用したシステムとしては、当サイトでも何度か紹介している「でんさい」がありますが、Tranzax社が提供するのは「でんさい」とはまた違った、新しい電子記録債権活用システムです。
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これは、さまざまな企業から注目・出資を受けており、近年動きが本格化してきたFinTachが、ファクタリングにも革命をもたらすと期待されています。
では、Tranzax社が提供するサービスについて解説していきましょう。
Tranzax(トランザックス)が提供するサービス
Tranzax(トランザックス)が提供するサービスは、以下の3サービスです。
- サプライチェーンファイナンス
- POファイナンス(売掛債権担保融資)
- PayForword(ファクタリング)
名前を聞いただけではよく分からないかと思います。では、順に説明していきます。
サプライチェーンファイナンス
発注企業(支払企業)と契約し、納入企業が持つ売掛債権を電子記録債権化する仕組みです。
大きな特徴は、「サプライチェーンの関係性にある企業」の売掛債権をまとめて電子化できること。
これにより、通常のファクタリングよりも低い手数料での現金化が可能となります。
仕組みとしては、Tranzax社が設立したSPC(特別目的会社)へ譲渡することで、支払期日の前でも現金化が可能となります。
サプライチェーンファイナンスのメリット
「サプライチェーンファイナンス」は、発注企業・納入企業ともに大きなメリットのある手法です。
まず、納入企業のメリットを挙げていきましょう。
- 発注企業の信用力によって、金利面を有利に資金調達ができる
- 電子記録債権の登録前に審査が行われるため、債権を記録する際に審査がない
- Tranzax社の無料サポートを受けながら、安心かつ簡単に債権を売買できる
- 従来の民間ファクタリングより効率が良く、電子債権記録機関なので抵抗を持たれにくい
まず、発注企業の信用力を活かせる点は、通常のファクタリングと同じ。売掛金は元請けの発注企業から直接回収できるので、手数料の計算は発注企業を中心に行われます。
ここからが、通常のファクタリングと異なる点で、サプライチェーンファイナンスの利用時は、電子記録債権を使って行われるので「債権ごとの審査」が行われません。
記録システムに企業として登録する際に審査を済ませてしまうため、受発注時はとてもスムーズにファクタリングの実行が可能です。
また、債権の売買はTranzaxの無料サポートがついてくるため、民間のファクタリング会社よりも信頼性の点では非常に上。
このように、従来のファクタリングと比較すると「簡単」「スムーズ」「手数料が低い」という点ですぐれた手法です。
また、発注企業のメリットも紹介していきましょう。
- サプライチェーンの効率化により、金利負担や金融機関利用手数料のコストカットにつながる
- 納入企業の資金繰り改善により、関係強化がはかれる
- 数百、数千社の納入企業(サプライヤー)への支払い事務が一括で
- 債権が電子記録されるため、多重譲渡や二重支払いリスクがゼロに
- 移行するための契約手続きもTranzax社が一括で電子契約へとりまとめてくれる
サプライチェーンの枠組みにある何百、何千の中小企業の債権をまとめて電子化できるため、支払い事務や債権管理の効率化が図れるのが大きな特徴です。
その際、金利負担や金融機関利用手数料などのコストカットも図れますので一石二鳥と言えるでしょう。
また、従来の「でんさい」では面倒だった契約・移行手続きも導入時にさTranzax社が一括で請け負います。
このように、発注企業側のメリットとしては、「効率化」「コストカット」「導入が簡単」という大きなものとなります。
発注企業にも少なくないメリットがあることで、納入企業側から導入を打診しやすいのも特徴でしょうか。
POファイナンス(売掛債権担保融資)
ざっくり説明すると、世界初の「でんさい」を活用した「売掛債権担保融資(以下、ABL)」です。
受発注を電子記録債権化、受注時点から債権を担保にして融資を受けられる仕組みとなります。
通常のABLと違い、POファイナンスは「発注企業・受注企業・融資する金融機関」すべてにメリットがある方法となっています。
導入メリットを紹介していきましょう。
POファイナンスの導入メリット
POファイナンスの導入メリットは、以下のとおりです。
- 納入企業は、受注した時点で債権を活用して資金調達ができる(現金化が非常に早い)
- 発注企業は、事業規模を問わずにフラットな取引が可能
- 金融機関は、発注企業から直接資金を回収(3社間ファクタリング)ができる
納入企業は、なんと「受発注時点」で債権を担保にした資金調達が図れるようになります。
従来のABLでは、最短でも受発注段階ではなく「納品・検収後に請求書を出した段階」からしか融資を受けられませんでした。
とはいえ請求書や納品書がなければ、担保にはできないので当然のことではあります。
ただ、POファイナンスでは電子記録で受発注段階から債権が証明できるようになります。「そのため融資が可能となる…」といった仕組みです。
また、債権は電子記録によって管理されるため、二十譲渡などの問題もシャットアウト。
管理や導入も簡単で、大企業でも「稟議を通すなど手間が増えるためファクタリングは全面的に断る」必要がなくなるのも大きなポイントです。
本来、案件でもっとも資金が必要なタイミングは「受注直後」なのは間違いありません。
このタイミングでの調達を可能にすることで、より質の高いサービスを提供できるようになるでしょう。
PayForword(ペイフォワード)
納入企業(サプライヤー)が主体となって導入できるファクタリング。従来のファクタリングとメリットは同じですが、導入や運用が非常に低コストなのが特徴です。
また、2社間の合意さえできれば、その後はTranzax社の提携金融機関とファクタリング会社を仲介して行われます。したがって、ファクタリング会社を間に挟んでやり取りをする必要がありません。
PayForword(ペイフォワード)を導入するメリット
PayForwardを導入するメリットは、以下の通りです。
- 受発注企業共に、導入・運用が低コスト
- 発注企業の信用力で、手数料を抑えつつスムーズに資金調達可能
- 納入企業の審査・担保不要
- 銀行口座も利用しているものがそのまま使える
これにより、納入企業の資金調達ニーズ解消、取引先との関係強化が期待できます。
また、資金ニーズにあわせてサービス設計が柔軟にできる点、発注企業へのサービス説明、導入に向けた調整等もTranzax社がサポートしてくれるのも大きなポイントです。
「Fintech」活用の流れでファクタリングに対するイメージも改善される?
今回紹介したサービスの大きなポイントは、「売掛先にファクタリングを打診しやすくなる」点にあると見ています。
発注企業にもメリットが多く、また導入・運用コストも大きくかからないことから、これまでのように「売掛先に知られたくない」という考えで手数料の高い2社間ファクタリングを行う必要が薄くなるのです。
特に、大規模な企業になるほどファクタリングの実行で発生する手間(振込先の変更など)を嫌って、下請けのファクタリングを断るところも珍しくありません。
Tranzax社の「サプライチェーンファイナンス」などは、手間が発生するどころか大幅にコストカット・効率化を図れるものになりますので、ここは大きなアピールポイントになります。
ですから、これまでのようにファクタリングの悪いイメージを払拭する可能性は、大いにあると考えてよいでしょう。
今、ファクタリングを行っている事業者の方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
Tranzax社は、「電子記録債権」を活用したサービスを展開する企業です。
FinTechベンチャーでありながら、国から「電子債権記録機関」の指定を受けたのはTranzax社のみ。かなり異色の企業であることがうかがえます。
提供するサービスは「サプライチェーンファイナンス」「POファイナンス」「PayForword」の3つ。
いずれも、納入企業・発注企業の両方にメリットもあり、またTranzax社のサポート付きで導入・移行・運用が簡単なのが大きなポイントです。
ぜひ、業務効率化・サプライチェーンのコストカットを図っている事業者は、導入を検討してみると良いでしょう。
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