在庫ファクタリングは主に小売業者向けに始まった新たなファクタリングサービスです。
在庫ファクタリングを利用することによって、余剰在庫を現金化して、経営改善を図ることができます。
本記事では在庫ファクタリングを利用するメリットやデメリットを分かりやすく解説して参ります。
目次
余剰在庫によるリスクとは?
在庫は抱えるだけでリスクになるとも言われています。
中小企業の場合ですと、薄利多売のビジネスモデルを構築することは難しいため、余剰在庫を抱えてしまいがちです。
余剰在庫を抱えることには、以下の様なデメリット・リスクがあります。
①品質リスク
売れ残り、在庫期間が長ければ長いほど品質の劣化を招いてしまいます。
特に食品の場合ですと、賞味(消費)期限があり、現金化することもままなりません。
衣類の場合でも、流行り廃りがあるため、やはり品質は劣化してしまいます。
②在庫管理コスト・スペース
在庫を多く抱えてしまうことは、保管スペースを圧迫してしまうことにもなります。
売れ残りの在庫の分、新たな在庫を置き換えることはできませんし、倉庫の賃料や人件費などの管理コストも嵩んでしまいます。
③税金増加
たとえ不良でも、在庫は資産としての扱いとなります。
ただ在庫を購入した際の仕入れ費用は、売れない限りは経費として認められません。
余剰在庫を抱えていることにより、支払うべき税金が増えてしまうのです。
④資金繰りの悪化
在庫が売れ残り、利益を産み出さないと資金繰りは悪化していきます。
利益どころか仕入代金の回収もできませんので、当然ながらキャッシュフローの悪化は必然です。
適正在庫の求め方
余剰在庫を抱えずに、在庫をどれほど保有していることが適正なのかどうかは、次の指標によって求めることができます。
- 在庫回転期間
- 在庫回転率
在庫回転期間とは、在庫を仕入れてからどのくらいの期間で販売されたかを表す指標です。
数値が低ければ、効率的に在庫管理が行われていることを表しますが、数値が高いと在庫期間が長いということになり、好ましくはありません。
在庫回転期間の計算方法は、以下の通りです。
在庫回転期間=棚卸資産÷売上高
在庫回転期間の目安は、商品の種類によって異なるため、一概には言えません。
一方で在庫回転率とは、一定期間の間に在庫がどれだけ売上に繋がっているかを表す指標です。
数値が高ければ、効率的に在庫を売上に繋げられていると言えます。
在庫回転率=売上原価÷棚卸資産という計算式で求めることができます。
在庫商品ファクタリングとは?
一般的なファクタリングは、企業が有している売掛債権をファクタリング会社に売却し、経営に必要な資金を調達するというものです。
在庫商品ファクタリングでは、売掛債権の代わりに「在庫商品」を用います。
基本的な仕組みや方法などは、一般的な在庫買取サービスと変わりません。
ファクタリング会社に申し込み後、在庫商品の価格や個数などが査定され、買取価格が決定します。
売却した商品は、ネットオークションを通じて販売されたり、ファクタリング会社独自の流通経路で販売されます。
希望があれば、市場に商品が出回ることもないため商品の価値を落とすこともありません。
在庫ファクタリングから現金化までの期間は、申し込みからおよそ1~3週間程度です。
在庫ファクタリングのメリットとは?
在庫ファクタリングのメリットは、2つ挙げられます。
- 売掛債権を有していなくても利用できる
- 審査がない
順番に解説して参ります。
①売掛債権を有していなくても利用できる
BtoCのビジネスモデルである小売業は、法人相手の売掛債権を他の業種に比べて、それほど多く有してはいません。
そのため売掛債権を売却して資金調達するという通常のファクタリングは、利用しづらいという実情があります。
しかしながら在庫ファクタリングは、売掛債権の代わりに在庫商品を活用するため、小売業でも利用することが可能です。
具体的には、「電気店」、「家具屋」、「家電屋」、「宝石店」、「洋服販売店」などが在庫ファクタリングの活用を見込まれています。
②審査がない
これは一般的なファクタリングと共通していることでもありますが、在庫ファクタリングは審査不要で利用することができます。
赤字決算、債務超過、税金滞納などを起こしてしまっている企業や信用情報が低い企業ですと、銀行融資を利用することは難しいでしょうが、在庫ファクタリングならば利用が可能です。
【関連記事】ファクタリングの審査に落ちる原因とは?審査時に見られるポイント
③節税になる
税金は利益に対してかかるものであり、売上原価が高くなれば、利益は減少します。
売上原価は以下の計算式で求められます。
売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 - 期末棚卸高
在庫ファクタリングによって在庫を減らすと、期末棚卸高が少なくなり、結果的に売上高は多くなります。
そのため利益分が少なくなり、節税対策になるのです。
【関連記事】ファクタリングには節税になるメリットもある?仕訳方法も合わせて解説
在庫ファクタリングのデメリットとは?
在庫ファクタリングにはデメリットや注意点も存在します。
次に確認していきましょう。
①買取価格は低い
基本的に、余剰在庫や不良在庫を在庫ファクタリングの対象とすることが多いでしょうが、そのような在庫品の場合は在庫ファクタリングの買取価格は低いものです。
具体的には、上代価格の10%~50%程度が期待買取率であり、卸売価格を超えることはほぼないでしょう。
②対応しているファクタリング会社が少ない
在庫ファクタリングは、小売量でもファクタリングサービスを利用できるように、との目的で始まりましたが、まだまだ対応しているファクタリング会社は多くありません。
既存の在庫買取サービスの存在や、差異化が困難、流通経路の確保が難しいといった理由で、全てのファクタリング会社が在庫ファクタリングに対応しているわけではないのです。
③古物営業法許可を得ているかどうかチェック
在庫を買取り、販売するという在庫ファクタリングは、古物取引に該当します。
そのため在庫ファクタリングを行うファクタリング会社は、古物営業許可を得ている必要があります。
古物営業許可を得ている業者であれば、ホームページに古物営業許可番号が記載されています。
もしも番号が記載されていないファクタリング会社の場合、悪徳業者である可能性が高いので、注意してください。
在庫ファクタリング以外の在庫処理の方法
最後に、在庫ファクタリング以外の在庫処理の方法、それぞれのメリット・デメリットを解説して参ります。
①廃棄処分
単純に、不要な在庫を廃棄処分にしてしまう方法です。
在庫整理や仕分け作業をする必要がなく、個人でも簡単に行うことができます。
廃棄処分業者に依頼すれば、多量の在庫でも一括で処分でき、倉庫のスペース確保も可能です。
ただ商品を完全に破棄してしまうため、売上機会の損失、製造コスト分が丸々赤字などのデメリットがあります。
②セール・特価販売
セールや特価販売を行うことにより、顧客の購買機会を創出し、在庫を減らすことができます。
また廃棄処分とは異なり、販売利益を手にすることも可能です。
セールや特価販売によって、新規顧客の獲得も期待できます。
ただ定価から値下げした価格での販売になるため、適正価格が下がってしまう、ブランド価値が失われてしまうなどのリスクはあります。
セール・特価販売のための人件費などの経費もかかり、加えて売れ残ってしまう可能性も考慮しなければなりません。
まとめ
近年、ファクタリング会社が新たに始めた在庫ファクタリングは、売掛債権を有していない小売業でも利用することが可能です。
ただ資金調達というよりは、在庫処分といった側面が強く、まだまだ認知度が低い・取り扱い企業が少ないといったデメリットがあります。
在庫処分だけならば、既存の買取サービスもあるので、利用の際には比較・検討してみて下さい。
資金調達を目的とするのであれば、通常のファクタリング会社を利用したほうがいいでしょう。
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