ファクタリング契約時には遡及義務があるかどうか、ノンリコースでの契約かどうかを注意しなければいけません。
もしも遡及義務があるファクタリング契約ですと、契約自体が違法になってしまう恐れがあります。
本記事ではファクタリングの遡及義務(償還請求権)とは何か、なぜファクタリング契約が違法になってしまうのかを分かりやすく解説して参ります。
目次
遡及義務(償還請求)とは?
遡及とは、裏書手形を降り出す際に、注意しなければいけない義務のことです。
受け取った手形は、振出人以外の第三者への支払いに充てることができ、これを手形の裏書きと言います。
手形を裏書き譲渡することでキャッシュがなくても支払いなどの資金繰りに利用することができます。
もしも手形の支払い期日に振出人が不渡りを起こしてしまい、手形が現金化できなくなってしまうと、裏書手形を受け取った所持人は、元々の振出人だけでなく、流通を遡って裏書人に対しても、債権の回収を請求することができるのです。
裏書きされた手形は、さらに裏書きをすることができ、裏書人が複数いる場合でも、所持人は複数の裏書人全員に請求ができます。
一般的には不渡りを起こした振出人からではなく、最も近しい裏書人から、請求は行われます。
訴求の仕組みは手形は信用に基づいて、価値が保証されているからとの認識によるものです。
手形を裏書する場合は、不渡り時のリスクを考慮して、署名をしなければいけません。
また遡及義務は別名、償還義務とも言い、遡及権は償還請求権とも呼ばれます。
ファクタリング利用時にも遡及義務(償還義務)に要注意!
ファクタリングと手形は、似て日なるものです。
【関連記事】ファクタリングと手形割引はどう違う?5つの違いを解説
しかしながらファクタリング契約時にも、遡及義務には注意しなければいけません。
ファクタリングとは、未回収の売掛債権をファクタリング会社に売却し、経営に必要な資金を得るというものです。
ファクタリングは債権譲渡(=債権の売買)なのですが、稀に契約に遡及義務(償還請求義務)が付与されている場合があります。
遡及義務があるファクタリング契約時には、不良債権化となる可能性に注意しなければいけません。
ファクタリング契約における遡及義務は、どのようなケースなのか次に考えてみましょう。
ファクタリング契約における遡及義務とは?
取引先の売掛債権をファクタリングした後(=売却)、取引先の破産などにより債権が不良化してしまったとします。
売掛債権が回収できないとなると、譲渡先であるファクタリング会社は損をしてしまいます。
この場合、ファクタリング契約に遡及義務が付いていると、ファクタリング会社は利用企業に対して、債権回収をすることができるのです。
そのためファクタリング契約を結ぶ際には、遡及義務の有無に注意しなければいけません。
基本的にファクタリングは遡及義務(償還請求権)がない
ファクタリング契約に遡及義務があると、取引先が代金を支払えなくなると、利用企業に支払い義務が生じてしまいます。
しかしながら、実際のファクタリング契約においては手形取引とは異なり、遡及義務(償還請求権)はありません。
遡及義務(償還請求権)がないほうが、利用企業側も安心して契約ができるため、現在ではほとんどのファクタリング会社が償還請求権なし(ノンリコース )での契約を謳っています。
またファクタリング契約に遡及義務がない理由は、顧客を増やすという理由だけではありません。
実は、遡及義務があるかないかは、ファクタリングが違法になるかどうかの危険性も関係しているのです。
ファクタリングに遡及義務があると違法になる?
ファクタリング契約時に、利用企業に買い戻し義務があるとファクタリングが違法になってしまう恐れがあります。
ファクタリングは貸付ではなく、あくまでも債権の譲渡(売買)です。
しかしながら債権が回収できなかった場合に、利用企業が弁済をしなければならないとなると、これは貸付ではなく売掛債権を担保にした融資と見なされてしまう可能性があります。
事実、過去には遡及義務が付与されたファクタリング契約が、債権譲渡ではなく債権担保融資であると見なされた判例があります。
当該の裁判は、ファクタリングの手数料の高さの不当性を訴えたもので、ファクタリング手数料が利息制限法を上回る利率であり過払金を求めた裁判でした。
そこでファクタリングが貸付であるとの根拠を示すために、遡及義務の有無が重視されたのです。
判決では、債権の売買であるからには債権が回収できない場合のリスクはファクタリング会社側も背負うべきであるとの論拠が示されました。
ただ被告側のファクタリング会社は、他にも違法行為が認められたため、総合的にファクタリングが貸付と判断されています。
そのため遡及義務があるからといって、一概にファクタリングが債権譲渡ではなく貸付に当たるとみなすことはできません。
他にもファクタリングを貸付だとして告訴した例はありますが、棄却された例もあります。
遡及義務を元に手数料の交渉はできる?
基本的にファクタリング契約は遡及義務はなく、もしも遡及義務があるとファクタリングが債権譲渡ではなく、債権担保融資と見なされてしまう可能性があります。
ただ利用企業側とファクタリング会社側の合意があれば、遡及義務があるファクタリング契約を結ぶことは不可能ではありません。
売掛先の信用力が高ければ、遡及義務付きの契約にし手数料を下げてもらうための交渉材料にすることもできます。
ファクタリング手数料は、売掛先の信用情報にも依拠するため、ファクタリング会社側も低い手数料での契約に応じる可能性はゼロではありません。
ただそれでも、売掛先が代金の支払いが不可能になるリスクについては考慮する必要があります。
もしも代金が回収できないとなると、自社に償還請求権があるため支払い義務が発生します。
また遡及義務付きのファクタリング契約が果たして本当に合法かどうかは未だ議論の余地があり、金融庁が偽装ファクタリングへの注意喚起を盛んに行なっている現在では、極めてリスクが高いと言えるでしょう。
遡及義務を忍ばせる悪徳業者に注意!
最も気をつけなければいけないのが、ファクタリング契約時に遡及義務を組み込む悪徳業者です。
悪徳業者は遡及義務があることを知らせず、契約書だけを提示してきます。
当然ながら契約書には「遡及義務」や「償還請求権」、「買い戻し」といった分かりやすい言葉では書かれておらず、複雑で回りくどい文言であることがほとんどです。
そのような悪徳業者に騙されないよう、契約者は子細にチェックしましょう。
不安な方は、売掛債権が未回収となった場合にはどうなるのか、遡及義務があるのかどうかを口頭で確認するのもいいでしょう。
償還請求権がないはずなのに、手数料が高い場合にも注意が必要です。
契約書を作成しない、契約書を渡さないといったファクタリング会社は、言うまでもなく利用をキャンセルしてください。
まとめ
遡及義務、別名償還請求は、主に手形取引で用いられる言葉です。
本来は裏書手形が不渡りになった場合に、振出人だけでなく裏書人に対しても、支払いを請求できることを言います。
ですが売掛債権の売買であるファクタリングにおいても、遡及義務については注意しなければいけません。
ファクタリングに遡及義務が存在すると、売掛先が支払い不能になってしまった場合には利用企業がファクタリング会社に支払いをする必要があります。
ですが、遡及義務があるファクタリングは売掛債権を担保とした融資に見なされる可能性もあり、実際に償還請求が付与されるファクタリング契約は一般的ではありません。
そのため遡及義務を忍ばせる悪徳ファクタリング会社には注意が必要です。
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