医療分野での資金調達手段というと、金融機関からの融資や、医療機関債の利用などが選択肢として挙げられます。
しかしながら資金繰りに悩んでいる医療事業者の方にとって、金融機関からの融資や医療機関債は
「調達までに時間がかかりすぎる」
「融資審査に通らない可能性が高い」
など、デメリットが多い資金調達法でもあります。
その代わりに近年、医療関係者の方から注目を集めているのが「診療報酬債権ファクタリング(医療ファクタリング)」です。
本記事では信用報酬債権ファクタリングの特徴や利用するメリット・注意点を詳しく解説して参ります。
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診療報酬債権ファクタリングの特徴
診療報酬債権ファクタリングは、通称医療ファクタリングと呼ばれるファクタリングの一種です。
介護事業・医療事業者などが有する診療報酬債権をファクタリング会社に売却し、期日前に現金化業者をするという資金調達方法のことを指します。
診療報酬債権ファクタリングには以下のような特徴があります。
- 2ヶ月先の債権まで早期現金化が可能
- 診療・介護・調剤分野の報酬債権を現金化可能
- 社保や国保を交えた3社間ファクタリングとなる
- 通常のファクタリングと違い、手数料は安くなる傾向に
それでは、具体的に解説していきましょう。
①2ヶ月先の債権まで早期現金化が可能
診療報酬債権は、初回の利用でも2ヶ月先の報酬分までのファクタリングが可能です。
2ヶ月分の報酬を現金化することができるため、高額かつ短期的な資金調達需要に最適な方法であるといえるでしょう。
②診療・介護・調剤分野の報酬債権が可能
医療ファクタリングは、債権の種類ごとに名称が異なっています。
具体的には「診療報酬」「介護報酬」「調剤報酬」の3種類に分けられます。
どの分野の医療債権でも問題なくファクタリングをすることが可能です。
③社保や国保連を交えた3社間ファクタリングとなる
医療債権は、社保・国保連に請求したうえで発生するものですので、ファクタリングの実行時には債権譲渡の通知を社保または国保連に対して行う必要があります。
「申し込み会社」、「ファクタリング会社」、「社保・国保連」という3社間で行われる3社間ファクタリングとなります。
3社間ファクタリングの難点として、売掛先から債権譲渡承諾を得られない可能性があることが挙げられます。
一方で医療ファクタリングの場合、社保・国保連が債権譲渡を禁止することは基本的にありません。
そのため他の分野に比べると、3社間ファクタリングを実行するハードルは低いと言えます。
④通常のファクタリングと違い、手数料は安くなる傾向に
医療債権の売掛先(支払い元)は、確実な回収が約束されている社保・国保連です。
債権が未回収となるリスクは極めて低く、手数料も民間の債権と比べてかなり抑えられる傾向にあります。
そのため医療ファクタリングは、通常のファクタリングに比べて低い手数料で資金調達をすることができます。
医療報酬債権ファクタリングの仕組み
続いて医療報酬債権をファクタリングする際の流れについて解説していきましょう。
医療ファクタリングの流れを端的に説明すると、
「社保(社会保険診療基金)や国保連(国民健康保険団体連合会)に対する債権を、ファクタリング会社に売却し、買取金額を調達する」
という流れになります。
ファクタリング会社は、社保または国保連に対し債権譲渡通知を送り、ファクタリング契約の成立後、社保・国保連が依頼者ではなくファクタリング会社に直接、医療債権を入金します。
具体的に、ナンバリングを振って流れを追っていきましょう。
- 依頼者→社保・国保連:診療報酬を請求(債権が発生)
- 依頼者→ファクタリング会社:ファクタリングを依頼・査定
- ファクタリング会社→社保・国保連:債権譲渡通知を送る
- ファクタリング会社→依頼者:売掛金から手数料・掛け目を引いた額を入金
- 社保・国保連→ファクタリング会社:期日になったら入金
- ファクタリング会社→依頼者:掛け目として除かれていた残りの金額を入金
医療債権には通常80%~90%の「担保掛目」が設定されます。
ファクタリング実行時は手数料を引いた額が100%入金されるわけではありません。
掛け目から除かれた残りの1~2割は、正規の支払い期日に入金される形になりますので、ご注意ください。
では次に医療報酬債権のファクタリングを利用するメリットについて詳しく見ていきましょう。
医療報酬債権をファクタリングするメリット
ここまでで、「ファクタリングは医療報酬を前払いするサービスだ」と理解している方も多いと思いますが、ではこの前払いが具体的にどのようなメリットがあるのか解説していきましょう。
具体的には以下の4点が挙げられます。
- 低手数料でファクタリングができる
- 初回でも最大2ヶ月先の債権まで現金化できる
- 審査通過率はほぼ100%
- 調達スピードが速い
ざっと挙げると、これだけのメリットがあります。それではチェックしていきましょう。
①低手数料でファクタリングができる
上述の通り、医療ファクタリングは売掛先の信用力が高いため、低手数料でファクタリングをすることができます。
大まかな手数料相場を調べましたので、参考程度に確認してみてください。
- 診療報酬債権:5%~4%
- 介護報酬債権:3%~7%
- 調剤報酬債権:2%~6%
一方で医療以外の業界でファクタリングを申し込んだ際の手数料は以下の通りです。
- 3社間ファクタリング:5%~5%
- 2社間ファクタリング:8%~25%
比べてみてお分かりの通り、医療業界は手数料が低いためファクタリングに最適な業界と言えます。
②初回でも最大2ヶ月先の債権まで現金化できる
ファクタリングでは、初回利用時はリスクを鑑みて、多額の債権の現金化は引き受けてくれない傾向にあります。
一方医療ファクタリングであれば、売掛先の信用力が高いため2ヶ月先の売掛債権でも問題なく買取に対応してくれます。
③審査通過率はほぼ100%
繰り返しになりますが、医療ファクタリングの売掛先は社保・国保です。
債権が未回収になる可能性は極めて低いため、ファクタリング審査で否決になることはまずありません。
申し込みをすれば100%ファクタリングを利用することができます。
④調達スピードが速い
医療ファクタリングは売掛先の信用力が高いため、審査はほとんど行われません。
社保・国保連が債権譲渡承諾をすれば、すぐに現金化した医療債権が入金されます。
場合によっては申し込みから即日でファクタリングをすることも可能で、融資や医療機関債に比べると遥かに調達スピードは速いと言えます。
医療報酬債権をファクタリングする時の注意点
医療債権をファクタリングする際の問題点をまとめました。
- 最大2ヶ月先までの債権しかファクタリングできない
- 手にできる報酬は少なくなる
- 融資を受けられるのであれば利用するメリットはかなり薄い
上記について、具体的にチェックしていきましょう。
①最大2ヶ月先までの債権しかファクタリングできない
先ほど、初回でも2ヶ月先までファクタリングできると述べましたが、これは取引を重ねても基本的に同じです。
2ヶ月先までしか債権を持っていないので当然といえば当然ですが、開業資金や高価な機器など、もっとまとまった資金が必要な際は別の手段を検討するべきでしょう。
②手にできる報酬は少なくなる
医療ファクタリングを利用すれば、期日前の診療債権を早期に現金化することができます。
しかしながらファクタリングの際には手数料がかかってしまいます。
そのため手にできる報酬は当初より少なくなり、長期的に見ると資金繰りは悪化してしまいます。
無計画に医療ファクタリングを実行し、資金を使うとかなり痛い目を見るのは想像に難くありません。
短期の資金繰りに適した手段とはいえ、実行には綿密にキャッシュフロー計算をする必要があります。
③融資を受けられるのであれば利用するメリットはかなり薄い
診療報酬債権を前払いしてもらっているだけなので、キャッシュ自体は増加していません。
むしろ手数料がかかるため、損をしてしまいます。
経営状況を改善するのであれば、手数料的にも融資を利用するべきでしょう。
したがって融資を受けられる状況であれば、医療ファクタリングを利用するメリットはないと言えます。
【関連記事】ファクタリングと銀行融資はどちらがおすすめ?特徴と種類を詳しく解説
まとめ
医療報酬債権は、さまざまな業界で発生する債権の中でも優秀で、現金化がきわめて容易な資産という点で価値が高いものです。
とはいえ、医療分野における診療報酬というのはたいていの場合、事業資金の中核を担っているものです。
その債権を、期日を待たずに現金化しなくてはならないほどキャッシュフローに苦しんでいるのであれば、まずは赤字改善のための努力からはじめてみるべきでしょう。
ファクタリングは一時金を手に入れるには最適な手段ですが、利用には長期的なキャッシュフロー改善を視野にいれておく必要があります。
ご利用の前には金融機関からの融資が受けられないかどうか、医療報酬債など他の資金調達方法とも比較して、利用を検討しましょう。
また医療債権の買取実績があるファクタリング会社は少なく、ファクタリング会社選びの際にはくれぐれも信頼性がある業者を選ぶ必要があります。
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