ファクタリングサービスは、昔から日本にあったものではありませんが、歴史自体はかなり古い手法です。
加えて、実は現在の「売掛金早期現金化」という役割を持ったファクタリングになるまでには、さまざまな経緯があるのです。
ファクタリングサービスはどう生まれ、現在の形に発展していったのでしょうか?
今回は、ファクタリングサービスの歴史や経緯を解説。
手形割引や他のサービスとも比較し、現在の形になるまでのいきさつを紹介していきます。
目次
ファクタリングは16世紀ごろから使われていた?
実は、キャッシュフローを早めるという目的での商取引は、紀元前から一部で利用されていました。
ただ、それが明確に「ファクタリング」と定義されるのは16世紀。
登場直後は、資金調達というよりも債権の支払い保証がメインでした。
その中でも発祥の地と言われるアメリカでは、17世紀からファクタリングが植民地拡大において少なくない影響を持っていました。
木材やたばこなどの輸出商品を、安心して前払いするための支払保証としてファクタリングを使い、資金を回して輸出量を高めていたのです。
そうした現代のファクタリングの原型が誕生したのが16世紀(一説では14世紀にあったとされていますが、こちらは定かではありません)。
そして、単なる支払い保証サービスではなく、本格的に「資金調達」として使われ始めたのは19世紀以降の話になります。
現在のファクタリングが使われ始めたのは19世紀末。アメリカを中心に流行
19世紀の半ば、産業革命の時代にファクタリングが「資金調達」としての機能を持つようになりました。
最初はイギリスで使われ始めましたが、19世紀末にアメリカの会社で導入されると、そこから次々に他社へ広まるようになります。
なお、この頃は信用調査や製品の保管・管理業務といった、昔の日本で言う「総合商社」としての役割もファクタリングが担っていました。
20世紀に現在の「ファクタリング」が大流行、アメリカの経済に影響を及ぼす
そして20世紀、現在の「資金調達」「支払保証」の機能を備えたファクタリングサービスが流行。
支払いサイクルを早めることで、キャッシュの回転率が上がり、大手から子会社まで経済成長に少なくない影響を及ぼしたのです。
その後、イギリスに再輸入する形で広まった現在のファクタリングは、アジア諸国を経て日本にも1970年代に認知されるようになります。
日本には1970年代に広まるものの…
日本では1970年代に、一部の事業者で認知されたファクタリングですが、しかし日本ではあまり広まりませんでした。
業務内容は、売掛金の早期現金化ではなく「信用調査」と「支払い保証」に特化したもの。
しかも都市銀行をはじめとする大手金融機関が取り扱うのみで、現在の「キャッシュフローを迅速化する」ファクタリングは普及しなかったのです。
なぜでしょうか。
なぜファクタリングは日本で流行らなかった?
なぜ、日本に輸入されたファクタリングはまったく広まらなかったのでしょうか。
実は、ファクタリングが広まらなかったのは以下のような、明確な理由があるのです。
- 手形割引が浸透していた
- 信用調査や代理店サービスなどはすでに代替手段があった
- 売掛債権を現金化するという行為自体が敬遠された
いくつか想像できるものもあると思いますが、ひとつずつ解説していきましょう。
1.手形割引が浸透していた
まず、大きな理由として1970年代の日本ではすでに「手形割引」が浸透していたことが挙げられます。
手形割引は「売掛金の早期現金化」や、「債権の支払い保証」といった役割が被ってしまっていますね。
これは、後から来たファクタリングが流行らなかった一番の原因といえます。
実際の所、1970年当時の日本ではファクタリングは手形割引と明確な差別化がなされておらず、利用メリットも薄かったのです。
2.信用調査や代理店サービスなどはすでに代替手段があった
手形割引の他に、ファクタリングが担っていた信用調査や代理店的サービスも、すでに総合商社が担っていました。
日本では、そもそもファクタリングが流行る余地どころか、手法としての席も埋まってしまっていたのです。
とはいえ、その後ファクタリングは代理店サービスをやめ、売掛金現金化に特化していきますから一概に悪いとも言えませんが。
3.売掛債権を現金化するという行為自体が敬遠された
これは、現在でも中小企業を中心に風潮として残っています。
「売掛金をわざわざ現金化するなんて、よほど資金繰りに困っているんだろうか?」
「突然倒産するんじゃないだろうか?」
ファクタリングの利用はこういった印象を相手に与えがちです。
これは、現在ではファクタリングサービスの進化もあって、建設、人材派遣、医療業界では無くなりつつあります。
ですが、まだまだ利用しにくいという現状もあり、直近の課題はこの風潮をどうにかすることでしょう。
手形割引は現状ほぼ使われていない。ファクタリングの将来性は?
上の項目で、ファクタリングが流行らなかった理由として「手形割引」の存在を挙げました。
時は経ち現在、手形割引は完全にファクタリングに食われてしまい、今ではほぼ使われなくなってきている手法です。
なぜなのでしょうか?
それは、ファクタリングが本来の役割である「債権の支払い保証」に加え、「早期現金化」としての役割も兼ね備え始めたためです。
また、ファクタリングはその過程で売掛先を介する従来の「3社間ファクタリング」に加え、「2社間ファクタリング」という業態も登場していきます。
こうして、幅広いニーズを持つ事業者が利用しやすくなったという理由で、手形割引が持つ役割はファクタリングへと受け継がれていきます。
そもそも、手形割引は時代が進むにつれてメリットよりもデメリットが目立つようになってきてしまいました。
なぜなのでしょうか?
ペーパーレスでやり取りするファクタリング、旧態依然とした手形割引
なぜなら、手形割引は管理コストや紛失リスクを含め、ペーパーレスが当たり前になってきている現代にそぐわない手法であるためです。
実際、機能から考えてもファクタリングは手形割引の上位互換といえるものなのです。
ファクタリングと手形割引の違いに関しては、ファクタリングと手形割引はどう違う?5つの違いを解説で説明しているので参考にしてみてください。
何より手形は、ファクタリングと違ってノンリコース(返済義務を負う必要が無い契約形態)ではないことが最大のネック。
売掛金の買取保証をしてくれるファクタリングの方が、事業者にとって利用しやすいのは明白でしょう。
金融機関が合同で「でんさい(電子記録債権)」を設立したのも大きく、このまま手形割引がなくなるのは時間の問題といえます。
日本でもファクタリングがどんどん広まる予感。業界内でのサービス競争も進む
日本でも2000年以降、さまざまな金融関連法が見直されたこともあり、ファクタリングサービスは経営者を中心に広まりつつあります。
特に「支払いサイトが長い」「売掛金額が大きい」「BtoBビジネスである」3つの条件を満たした業界はファクタリングを有効活用するのに適しています。
先ほども少し触れましたが建設業界、人材派遣業界がそれに該当しますね。
売掛先の与信が高く有利に交渉しやすい医療業界も、ファクタリングの認知度は比較的高いです。
追い風として、改正貸金業法が施行されて以来注目度が高まったファクタリングは現在多くの企業が参入しており、サービス競争が激しくなってきています。
利用者側にとってはファクタリングが利用しやすくなると同時に、企業の淘汰も進み以前ほど悪徳業者は目立たなくなってきました。
これからますますファクタリングの質、利用率は向上していくと思いますので、利用を検討してみると良いでしょう。
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