最近注目が集まる「ファクタリング」と「売掛債権担保融資(ABL)」。
どちらも債権を利用した資金調達手段であり、どちらを利用すべきか迷っている方も多いでしょう。
ただ、両者は似て非なる手法ですが混同されやすく、まだまだ理解が進んでいるとは言いがたい状況でもあります。
そこで、本記事ではファクタリングと売掛債権担保融資の違いを7つの側面から比較。
どんな債権がファクタリング、あるいは売掛債権担保融資に適しているのかを解説していきます。
目次
売掛債権担保融資(ABL)とは?
売掛債権担保融資(ABL)は、不動産ローンのように「売掛債権を担保に与信を補い、融資を受ける」手段。
混同されがちですが、債権を売却してキャッシュを得るファクタリングとは、融資かそうでないかという点で大きな違いがあります。
加えて、ファクタリングがひとつの債権を対象とするのに対し、売掛債権担保融資は手持ちの全債権が総合的に評価されます。
そのため、通常の融資と比べ審査に通りやすいのが特徴で、不動産資源を持たない企業も活用できるいわば救済手段といえます。
一方で、短期融資となるので手数料は通常の融資と比べて若干高くなります。
審査内容としては、自社の与信だけでなく取引先の与信や取引額、債権の分散具合など総合的に判断されることが多いです。
この売掛債権担保融資を利用して、多額の資金調達に成功した例も多く報告されており、注目の集まる資金調達手段となっています。
それでは、この売掛債権担保融資とファクタリングの違いを解説していきましょう。
売掛債権担保融資とファクタリングの違いを7つの側面から比較
売掛債権担保融資は、ファクタリングと似て非なる資金調達手段であり、ターゲットにする事業者も異なっています。
以下の違いを把握して、どちらがより自社にふさわしい手段かを検討していきましょう。
- 貸し倒れリスク
- 売掛先(取引先)への通知
- 調達できる金額
- 手数料相場
- 入金スピード
- 審査の通りやすさ
- 信頼性
それでは、詳しく解説していきます。
1.貸し倒れリスク
売掛債権担保融資とファクタリングの大きな違いは、貸し倒れによる返済リスクの有無です。
売掛債権担保融資は、債権を担保にしているだけなので不渡りによる損失は自社で被ることになります。
一方、ファクタリングは一旦譲渡した債権が不渡りになった場合、リスクを自社で負う必要はありません。
ほとんどのファクタリング業者では「償還請求権なし(ノンリコース)」で契約を結ぶことが多く、これは「貸し倒れリスクを加味したうえで買い取る」というものです。
したがって、リスクヘッジの観点でいえばファクタリングはABLよりも優れた手段といえるでしょう。
2.売掛先(取引先)への通知
銀行をはじめとする金融機関が提供する売掛債権担保融資は、売掛先への通知が必要となるケースが多いです。
民間のABL業者であれば、売掛先へ通知せずに融資を行ってくれるところも増えてはいますが、数が多いわけではありません。
一方で、ファクタリングでは売掛先に通知する「3社間ファクタリング」と通知しない「2社間ファクタリング」で分かれています。
売掛先の理解が得られそうにない場合、2社間ファクタリングで柔軟に資金調達ができるのは大きな差といえるでしょう。
3.調達できる金額
調達できる金額は、売掛債権担保融資に軍配が上がります。
ファクタリングでは、どうあがいても債権の金額以上の資金を調達することは不可能なので、自社の能力を超えた調達はできません。
一方で、売掛債権担保融資は審査次第で通常の融資と同じように、事業拡大のための資金調達をすることも可能です。
4.手数料相場
手数料については少々複雑なので、先に相場の話をしましょう。
現在、2社間ファクタリング、3社間ファクタリング、売掛債権担保融資の金利手数料相場は以下のようになっています。
名称 | 手数料 |
---|---|
3社間ファクタリング | 1.5%〜5% |
2社間ファクタリング(初回) | 15%〜30% |
2社間ファクタリング(継続) | 7%〜15% |
売掛債権担保融資(銀行) | 3%〜7%/年 |
売掛債権担保融資(ノンバンク) | 8%〜15%/年 |
2社間ファクタリングは、依頼者の与信に左右される部分が多く、初回と継続契約で手数料が大きく変わります。
さて、ここで注目して欲しいのが「手数料」と「金利」の違い。
ファクタリングを「超短期融資」として捉えるなら、たとえば手数料が15%、支払いサイトが2ヶ月先であれば金利は「15%/2ヶ月」であると考えられます。
つまり、これを年利で換算すると「90%/年」。
数年に1度利用する程度であれば影響はないのですが、年に何回も利用していると手数料は膨大になり、キャッシュフローは悪化の一途を辿ります。
これが、ファクタリングを利用するうえでもっとも気をつけなくてはならない部分であり、多用すべきではない理由でもあります。
つまり、大口の債権を売却するなどの理由ではなく、単純に「キャッシュフローを改善したい」というニーズである場合、往々にして売掛債権担保融資のほうが優れているケースが多いです。
総じて、金利手数料面では売掛債権担保融資に分があるといえますね。
5.入金スピード
入金スピードに関しては、ファクタリングが圧倒的に早いです。
2社間ファクタリングの場合、最短即日〜3日以内での入金が可能なのに対し、売掛債権担保融資は早くても1週間程度。
急ぎの資金ニーズを抱えている場合は、ファクタリングの方が適しているでしょう。
6.審査の通りやすさ
売掛債権担保融資は、通常の融資と比べて審査に通りやすいとはいえ、依頼者の与信を重視されないファクタリングよりは厳しいです。
赤字決算・税金滞納などの記録が審査に影響しないファクタリングは、経営が苦しい中小企業にとってありがたいものであるともいえるでしょう。
7.信頼性
業者に寄ってブレ幅がありますが、貸金業登録をしなければ提供できない「売掛債権担保融資」のほうが同じノンバンクでも多少は信頼が置けます。
ファクタリングは、法律によって手数料上限が定められておらず、まだまだ今後どう転ぶかわからない業界です。
ファクタリングを利用する際は、悪徳業者を警戒しつつリサーチをするべきといえるでしょう。
優良業者の探し方については、別記事でもまとめてありますので参考にしてみてください。
回収したい債権があるならファクタリング、資金繰り改善なら売掛債権担保融資
上記を鑑みると、手数料や調達できる資金面で、ファクタリングよりも売掛債権担保融資が優れていることがわかります。
実際、ファクタリングは単なるキャッシュフロー改善のための手段というよりは、「特定の債権(売掛金)を早く回収できる」メリットを活用すべきといえます。
特定の債権とは、たとえば以下のような債権です。
- 大口のスポット案件
- 支払いサイトが長期にわたっている債権
- すでに支払い実績のある債権
こういった「回収するメリットが多い大きい」債権の場合、ファクタリングは利用する価値があるといえます。
加えて、売掛先が理解を示し、3社間ファクタリングに持ち込めるのであればベストでしょう。
一方で、単に資金繰りを改善したいというケースでは、必ずしもファクタリングが向いているとはいえません。
ファクタリングは売掛金を前倒しにする手段なので、どうしても回収したい大口・支払いサイトが長期の債権こそ利用する意味があるのです。
まとめ
前の項で結論づけていますが、「キャッシュフロー改善」が目的であれば、売掛債権担保融資を利用するメリットは大きいでしょう。
不動産資源がなくても融資を受けられるほか、すべての債権を総合的に判断するので、審査が比較的通りやすいのです。
加えて、「債権を担保に融資を受ける」というメカニズムが、取引先の理解をファクタリングより得られやすいのもメリットです。
一方で、以下のような債権を持っているなら、ファクタリングの利用が適しているでしょう。
- 大口のスポット案件
- 支払いサイトが長期にわたっている債権
- すでに支払い実績のある債権
3社間ファクタリングで実行すれば、1.5%〜5%の手数料で売掛金を回収できるので、メリットがものすごく大きくなります。
どの債権がどちらに適しているか、よく検討して自社にあった手段を選んでいきましょう。
人気急上昇のおすすめファクタリング会社をご紹介
個人でもご利用することができる現金調達サービスをご紹介いたします。