2社間ファクタリングが広まった要因として、この「債権譲渡登記」の存在が挙げられます。
債権譲渡登記とは、いったいどのようなもので、どんな必要性があるのでしょうか?
また申し込む側にとっては、債権譲渡登記が売掛先に通知されるかどうか、銀行融資に悪影響が出ないかどうかがもっとも気にかかるところでしょう。
本記事では、債権譲渡登記の重要性や申し込む側のリスクについて、詳しく解説していきます。
目次
債権譲渡登記とは?
債権譲渡登記とは、債権譲渡をする際に、債権譲渡をした事実を登記(記録)し、新たな債権者が誰なのか、債権の正式な所有者を明確にするための制度です。
仮に債権譲渡登記制度が無いと、特に債権者が複数いる場合に誰が正しい債権者なのかが分からなくなってしまいます。
またその状態を利用して、同一の債権を複数の第三者に譲渡・売却をしようと企てる債務者も現れてしまいます。
そのような自体を防ぐために、債権譲渡制度があります。
債権譲渡制度によって、第三者(差押債権者・破産管財人・二重譲渡人など)に対して債権譲渡を証明することを「第三者対抗要件」と呼ばれます。
簡単にまとめると、債権譲渡登記をすることで第三者に対して対抗要件を持つことができ、自分が正しい債権者であると証明することが可能になるのです。
この債権譲渡登記制度は平成17年の改正を経て、第三者対抗要件を確立するために作られた制度です。
債権譲渡登記を行うことで2社間ファクタリングが可能に
これまではファクタリングというと3社間ファクタリングが一般的でした。
ですが債権状登記制度が整備されたことで、ファクタリング会社と申し込み企業の2社間でのファクタリング契約が可能となったのです。
債権譲渡登記を行うことで、債権の所有者が明確になるため売掛先を交えなくてもファクタリングをすることができます。
2社間ファクタリングが誕生したことにより、
- 最短即日でファクタリングができる(資金調達ができる)
- 売掛先にバレずにファクタリングができる
などの利点があり、ファクタリング利用が急増するきっかけとなりました。
また債権譲渡登記を行うことで、ファクタリング会社にとって、以下のようなメリットがあります。
メリット:差押債権者や二重譲渡に対抗できる
債権譲渡登記によって、ファクタリング会社が正式な債権の所有者であることが保証されます。
一度債権が登記されれば、譲渡人は複数のファクタリング会社に同じ債権を売る「二重譲渡・多重譲渡」をすることはできません(そもそも違法)。
逆に債権譲渡登記ができなかった場合、複数の会社に債権を売り渡している、あるいは差し押さえられていることをすぐに把握することができます。
つまりファクタリングを行う際に二重譲渡かどうかがわかるため、リスクのある契約をせずに済むのです。
ファクタリング会社にとっては、二重譲渡や差押債権者の存在が大きなリスクとなります。
トラブルによる「貸し倒れ」を防ぐために、債権譲渡登記は非常に重要なものです。
ファクタリング利用側として債権譲渡登記で気になるのは、
「売掛先に知られるか」
「銀行の融資に悪影響が出るか」
の2点でしょう。続いては、果たして登記のリスクがあるのかどうかを説明していきます。
債権譲渡登記はリスクがある?銀行や売掛先には知られないか?
結論から言うと、債権譲渡登記をしても売掛先に知られることは基本的にありません。
同時に登記によって銀行の融資に悪影響が出ることもありません。
債権譲渡登記は「商業登記」や「不動産登記」とは全く異なります。
そのため会社の登記や不動産登記を照合されても、債権譲渡の帰路を把握することは不可能です。
債権譲渡等は登記簿に記録されるだけで、売掛先にわざわざ通知されることはありません。
もちろん法務局に行けば「債権譲渡登記概要記録証明書」を見ることはできますが、「譲渡人の商号」「売掛先の情報」などは記載されていません。
一般に公開される記録上では、誰がどこに債権を売り渡したか、は明らかにならないのです。
銀行に関して言っても、債権譲渡登記ひとつで信用調査に大きく響くことはありません。
それよりも赤字決算が続いているなど、経営に強く関連する事項の方が影響力は大きいと言えます。
債権譲渡登記は3社間ファクタリングでは不要
3社間ファクタリングでは、売掛先に債権譲渡通知の承諾を貰った上で、売掛先が直接ファクタリング会社に入金することになります。
そのため第三者への対抗要件を法的に備える必要性がなく、債権譲渡登記をする必要はありません。
また債権譲渡登記が不要であるため、印紙代などのコストをカットすることができます。
3社間ファクタリングの手数料が低いのは、登記にかかる経費がカットできるためという側面もあるのです。
2社間ファクタリングが法人のみを対象にしている大きな理由
実は、2社間ファクタリングのほとんどが法人を対象にしているのは、この債権譲渡登記の仕組みが影響しています。
債権譲渡登記は、法人間での取引のみを対象としているため、個人事業主の方ですと登記ができません。
個人間では債権譲渡登記ができず、冒頭で説明したような二重債権のリスクが高くなるため、どうしてもリスクを考えると受けられない場合が多いのです。
ただ最近は個人事業主の方でも、法人相手の売掛先を有していればファクタリングが可能なファクタリング会社も増えています。
また個人事業主の方向けに、売掛債権の保証サービスを行うというファクタリング会社も登場しています。
債権譲渡の手続きと費用
債権譲渡登記の手続きと、それにかかる費用は以下のとおりです。
登記の種類 | 登録免許税額 |
---|---|
債権譲渡登記 1件につき | 債権の個数が5,000個以下の場合 7,500円 |
質権設定登記 1件につき | 債権の個数が5,000個以下の場合 15,000円 |
登記の提出方法は窓口に持参するか、郵送で法務局の債権登録課に送るかのどちらかです。
なお、譲渡人(申込者)は、この登記手続きをする際に以下の書類が必要となりますので、あらかじめ準備しておきましょう。
添付書面 | 注意事項等 |
---|---|
譲渡人(質権設定者)の代表者の資格証明書(登記事項証明書) | 作成後3か月以内のものに限ります。 |
譲渡人(質権設定者)の代表者の印鑑証明書(登記所が作成したもの) | 作成後3か月以内のものに限ります。 |
譲受人(質権者)の代表者の資格証明書(登記事項証明書) | 譲受人が法人の場合に必要です。作成後3か月以内のものに限ります。 |
存続期間が登記の日から50年(債務者不特定の債権を含む場合には10年)を超えるときは,その存続期間を定めるべき特別の事由があることを証する書面 |
引用:法務省 「第2登記申請の手続」より
なお実際に登記を行うのはファクタリング会社なので、譲渡人は書類を準備するだけで事足ります。
ただ登記に必要な印紙代や司法書士の交通費などの諸経費は、申し込み会社が負担しなくてはならない場合がほとんどですので注意してください。
債権譲渡登記の内容
債権譲渡登記で記録される事項は以下の通りです。
- 債権の譲渡人(ファクタリングを利用した企業)の住所・商号
- ファクタリング会社(債権の譲受人)の住所と商号
- 譲渡する債権の債務者(売掛先)の住所と商号
- 譲渡する債権の種類(売掛金や貸金など)
債権譲渡は東京法務局で行う
債権譲渡は、都内の法務局でのみ行えます。
地方からはWeb経由と郵送の2通りの手段がありますが、Web経由の手続きが煩雑なので、郵送でやりとりをする場合が多いようです。
ちなみに登記自体は債権登録課(さいけんとうろくか)で行ないますが、債権登録課では「概要記録事項証明書の交付」ができませんのでご注意ください。
まとめ
債権譲渡登記は、2社間ファクタリングにおいて、債権を買い取ったファクタリング会社がその所有権を主張するのに必要な登記です。
債権譲渡をすることによって、譲渡人が他のファクタリング会社に同じ債権を売り渡す「多重譲渡」を防ぐことができます。
ただ債権譲渡登記が必要なのは、基本的に売掛先を介さない2社間ファクタリングのみです。
3社間ファクタリングでは、売り掛け先から直接「債権譲渡通知」を承認してもらいますから、基本的には不要です。
そして債権譲渡登記は、売掛先に知られるリスクはありませんし、銀行の信用情報に影響することもありません。
債権状登記は手続きがやや面倒で、費用もかかってしまいます。
それでも近年は債権譲渡登記不要でファクタリングを行う業者も増えており、費用や煩雑さを無くしたい方はそのようなファクタリング会社を利用するようにしましょう。
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