ファクタリングと手形割引は共に売掛債権を現金化するという類似点があり、混同してしまいがちです。
そこで本記事ではファクタリングと手形割引の違いから両者のメリット、デメリットを比較して解説していきます。
手形割引とファクタリングのどちらを利用すべきか迷った際には、参考にしてみてください。
目次
手形割引とは?
手形割引とは、「約束手形を担保にして、金融機関から融資を受けること」です。
わかりやすく説明するために、商品を売った会社をA社、仕入れた会社をB社としましょう。
約束手形は、商品を仕入れたB社が「○月○日に代金を支払います」と契約し、A社が「○月○日に代金をいただきます」と契約したことを互いに証明するものです。
ところが、商品を売ったA社は、支払い期日よりも前に代金が必要となってしまいました。
そこで、A社は約束手形を銀行に持ち込み、審査を受け手形を担保にすることで融資を受けることができます。
つまり手形割引とは、支払い期日がまだの約束手形を銀行で換金するということです。
なお、手形を割引く際には、割引料という名の金利手数料が発生します。
割引料は、手形の金額から1.5%〜5%の手数料を差し引いた金額です。
約束手形と売掛金の違いは?
手形割引と売掛金との違いを説明しておくと、約束手形(受取手形)は法的に強制力のある契約であり、売掛金は口約束に過ぎません。
そのため、この約束手形は資産的な価値を持つとみなされ、担保にすることができるのです。
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ファクタリングとは?
ファクタリングとは、「約束手形」を含む売掛金を、金融機関やファクタリング業者に「売却」して現金化することを指します。
大まかな流れは「手形割引」と同じなのですが、ファクタリングでは、「約束手形」だけでなく売掛債権全般が対象になります。
さらに、手形割引では「融資を受ける」のに対し、ファクタリングは、ファクタリング会社や金融機関に対し「売掛金を受け取る権利」を売却するという点を押さえておきましょう。
ファクタリングをする際には、売却相手に買取手数料を支払います。
またファクタリングの方法には取引先に通知する3社間ファクタリングと、取引先に通知しない2社間ファクタリングという2つの種類があります。
ファクタリングの詳しい種類と仕組みについては、別記事をご参照ください。
ファクタリングと手形割引の違い
ファクタリングと手形割引は、「売掛債権の早期現金化」という意味では、同じです。
最も大きな違いは、手形割引が融資であるのに対してファクタリングは売掛債権の売却であり、融資ではありません。
それに伴い、ファクタリングと手形割引には次のような違いもあります。
- 償還請求権の有無
- 短期借入金(負債)として計上されるかどうか
- 手数料の差
- 審査の厳しさ
- 調達スピードの差
それでは、詳しく解説していきましょう。
①償還請求権の有無
手形割引とファクタリングの最大の違いは、先ほども触れましたが「融資」か「売却」か、という点です。
そのため手形割引では、手形の振出人である取引先が不渡りを起こした場合、金融機関への返済義務が生じます。
手形を割引く時や裏書きする際にはこの、「不渡りリスク」を重々理解しなければいけません。
一方のファクタリングは「売掛債権」を売却する(譲渡する)ことで資金調達をするというサービスです。
ファクタリング契約の際に、返還請求権(遡及義務)をつけると、債権の売買ではなく債権を担保にした貸付であると見なされます。
そのためファクタリングに償還請求権はなく、売掛金が支払われなくても、返済を行う必要はありません。
②短期借入金(負債)として計上されるかどうか
繰り返しになりますが、手形割引は融資を受ける行為です。
したがって金融機関には「短期借入金」として計上されてしまい、融資を受ける際にはマイナス要素となってしまいます。
対して、ファクタリングは「債権譲渡」なので、負債として計上されることはありません。
そもそもファクタリングを利用しても信用情報に記録されることはないため、他の融資審査に影響を与えることもないのです。
③手数料の違い
手形割引は、銀行であれば1.5%〜3.5%程度、その他金融機関でもおおむね5%以内の手数料で現金化できます。
それに対し、ファクタリングの手数料は条件にもよりますが20%を超える場合もあります。
仮に10%の手数料だった場合、年利に換算すると120%もの高い金利となってしまいます。
ファクタリングの手数料が高い理由は、債権が未回収となるリスクの高さが理由です。
さらに、譲渡人が複数のファクタリング会社で同じ債権を売却する「多重譲渡」を防ぐために、「債権譲渡登記」の手続きも必要になります。
これにかかる経費、債権が回収不能になった際のリスクヘッジなどを鑑みて、ファクタリングの手数料は手形割引よりも高くなってしまうのです。
④審査の厳しさ
先ほど解説したとおり、「手形割引」がもし不渡りになってしまった場合、申し込み会社が返済する必要があります。
そのため手形割引の審査の際は、返済能力があるかどうか信用情報をしっかりチェックされます。
そのため赤字決算・債務超過や税金の未払いなど、融資におけるマイナス要素がある場合は手形割引を受けられない可能性が高いです。
一方、ファクタリング会社は「債権を売却」する行為のため、利用企業よりも「売掛先」の信用(倒産しないかどうか)を重視して審査されます。
利用企業の信用も多少は審査されますが、債権回収にはあまり関わりがないのでそこまで重要視はされません。
そのため創立から日が浅く、赤字決算・税金の未払いなど多少のマイナス要素があってもファクタリングを利用することができます。
【関連記事】ファクタリングは創業間もないベンチャー企業も利用できる!
⑤実行スピードの差
手形割引とファクタリングでは、実行スピードにも差があります。
手形割引の場合、自社と取引先の2つの審査にだいたい早くて1週間、最長で3週間程度を要するケースが大半です。
それに対して取引先に通知しない2社間ファクタリングならば、最短即日で資金調達をすることができます。
前述の通りファクタリングの審査は厳しくないため、このように速い調達スピードが可能です。
まとめ:ファクタリングは手形割引より実用的な手法
項目 | ファクタリング | 手形割引 |
---|---|---|
償還請求権 | ナシ | アリ |
手数料 | 高い | 低い |
調達スピード | 速い(最短即日) | 遅い |
審査 | ほぼナシ | 厳しい |
信用情報 | 記録されない | 記録される |
企業の歴史は手形割引とともに歩んできたといっても過言ではないくらい、手形割引は昔から使われている手法です。
ですが、その代替手段として、いまではファクタリングが総合的にすぐれた資金調達法となってきています。
まとめると、手形割引は
- 不渡りになった場合の返済義務がある
- 短期借入金(負債)として計上される
- 手数料は1.5%~3.5%
- 審査は厳しい
- 実行スピードは初回で1~3週間程度、2回目以降は早い
これに対し、ファクタリングは
- 不渡りになっても返済義務がない
- 負債として計上されない
- 取引先にバレない
- 手数料は1.5%~25%、ばらつきあり
- 審査は緩い
- 最短即日で資金調達が可能
と、総合的に優れています。
ファクタリング会社利用の際、信用面を気にする場合が多いのですが、近年では、ファクタリング会社もサービス争いによって手数料が安くなってきており、実績があり信用のおける業者も増えている傾向にあります。
今まで手形割引を利用していた方も、一度ファクタリングサービスを検討してみると良いでしょう。
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