国際ファクタリングは輸出企業向けのファクタリングで、「代金回収にかかわるリスクヘッジ」と「輸入企業の信用調査」を目的に行うサービスです。
本記事では
- 国際ファクタリングとは、仕組みや利用方法
- 国際ファクタリングのメリット・デメリット
- 国際ファクタリングと信用状(L/C)取引の違い
について詳しく解説して参ります。
目次
「国際ファクタリング」とは?
国際ファクタリングとは、海外企業と貿易取引をする国内の輸出企業が、取引先である輸入企業から代金を回収するために行うファクタリングのことです。
通常の一括ファクタリングは未払いの売掛債権を売却し、資金調達を行う目的で行われます。
一方で国際ファクタリングの目的は「代金回収にかかわるリスクヘッジ」と「輸入企業の信用調査」の2つです。
海外企業との取引ですと、代金が期日内に支払われるのかは死活問題です。
取引先の信用情報を簡単に入手することも難しく、万が一支払いが行われない場合に訴訟を起こすのも一苦労となります。
ですが国際ファクタリングを利用することで、「輸入企業の信用調査」業務を逓減し、「代金回収リスク」を小さくすることが可能です。
国際ファクタリングの仕組み・利用方法
続いて国際ファクタリングの仕組みや利用方法を簡単にご説明します。
手順としては以下の通りです。
- ファクタリング会社に輸出企業が申し込み
- ファクタリング会社は海外ファクタリング会社を通じて輸入企業の信用情報を調査
- 輸入企業の信用情報に問題が無ければ、海外のファクタリング会社が支払い保証を引き受ける(信用保証の引受受領)
- 商品船積み後、輸入企業が海外のファクタリング会社へと支払いをする
- 海外のファクタリング会社から、国内のファクタリング会社へと支払い
- 国内のファクタリング会社から輸出企業へと支払い
ご覧の通り、国際ファクタリングでは「輸出企業」、「輸入企業」、「国内ファクタリング会社」、「海外ファクタリング会社」の4社間で契約が行われます。
現地のファクタリング会社が輸入企業の信用調査を行うため、輸出企業は海外企業の与信管理業務を負う必要はありません。
また現地のファクタリング会社が輸入企業から代金の回収を行うため、「代金の回収リスク」も減らすことができます。
代金の流れは、
「輸入企業」→「海外のファクタリング会社」→「国内のファクタリング会社」→「輸出企業」
となります。
信用状(L/C)と国際ファクタリングの違い
海外取引においては、信用状(L/C)を使った取引が一般的です。
信用状(L/C)とは、輸入国の銀行が輸入企業からの依頼で発行する書状のことです。
信用状があれば、輸入企業に代わって銀行から支払いを確約してもらえるので、回収不能になるリスクを防ぐことができます。
また商品の船積み後、すぐに信用状を用いて代金を回収することができ、キャッシュフローを改善することも可能です。
しかしながら従来の信用状を使った取引には以下のようなデメリットも存在します。
- 手続きがかなり煩雑、とにかく書類が多い
- 銀行の審査が厳しい
- 銀行から割引手数料が差し引かれる
- 書類の到着にも時間がかかる
- 非常に厳格で、一文字でも書類に不一致があれば保証が成立しない
例えば販路を拡大するために、海外の規模の小さな法人バイヤーとやり取りをするとします。
通常であればL/C決済で取引をしたいのですが、残念ながらバイヤーの信用力が低く、L/Cが解説できませんでした。
こうした場合、リスクを抱えてバイヤーと取引をするか、L/Cが発行できないのであれば仕方なく諦めるか、という2択になってしまいます。
言わずもがなビジネスとしては望ましいモノではありません。
そもそも、L/Cはかなり厳しい審査を経て開設できるもので、手続きにも時間がかかります。制限も強制力も低いのも相まって、取引の自由度が低くなってしまうのもネックです。
そこで登場したのが、大手金融機関による「国際ファクタリング」です。
代金回収という目的は同じであるものの、ファクターという第三者が介入することによって、より確実に代金を回収できるような仕組みが整えられています。
また国際ファクタリングと信用状(L/C)の違いとしては、
- 国際ファクタリングなら100%売掛債権が保証される
- 国際ファクタリングは信用状解説の審査がない
- 輸入企業の信用調査が不要
- 必要書類が少なく簡易的である
といったことが挙げられます。
それでは国際ファクタリングのメリットについて見ていきましょう。
国際ファクタリングを利用するメリット
国際ファクタリングを利用するメリットは、以下の5つです。
●輸出債権を確実に回収できる
●海外バイヤーの信用調査ができる
●出荷証明書類のコピーのみで取引が可能、L/C(信用状)取引より簡単
●三国間貿易にも使える
●輸出債権の回収業務をアウトソーシングできる
それでは、具体的に解説していきましょう。
①輸出債権を確実に回収できる
輸入企業の信用調査は現地のファクタリング会社が厳格に行います。
また、万が一輸入企業が支払い不能に陥ってしまっても、ファクタリング会社が支払いを保証してくれます。
そのため国際ファクタリングを利用すれば、輸出債権を確実に回収することが可能です。
ただ保証が履行されるには、輸入企業の支払い延滞90日後となる点には注意してください。
②海外バイヤーの信用調査ができる
国際ファクタリングを利用することで、輸入企業の支払い調査をすることができます。
信用調査は現地ファクタリング会社が代行してくれますので、与信管理が楽になります。
③出荷証明書類のコピーのみで取引が可能、L/C(信用状)取引より簡単
出荷を証明する書類(輸入・輸出の証拠)があれば国際ファクタリングを利用することができます。
さまざまな書類が必要で、書式が厳格なL/C取引よりも、国際ファクタリングは遥かに簡単です。
④三国間貿易にも使える
国際ファクタリングは2国間貿易だけでなく、3国間貿易にも可能です。
3国間貿易時にL/C取引を利用すると、手間と時間がとてもかかります。
ですが国際ファクタリングであれば、L/C取引よりも遥かに時間と手間を短縮することができます。
⑤輸出債権の回収業務をアウトソーシングできる
国際ファクタリングを利用すれば、海外ファクタリング会社が輸出債権の回収業務を行ってくれます。
海外企業への債権回収は非常に難儀ですが、回収業務をアウトソーシングできるのは大きなメリットであると言えるでしょう。
国際ファクタリングのデメリット
一方、国際ファクタリングが抱えるデメリットには、以下のようなものが挙げられます。
●L/Cと比較して手数料が高額
●信用調査に時間がかかる
●取り扱っているのが大手金融機関のみ、比較対象が少ない
それでは、詳しく解説していきましょう。
①信用状と比較すると手数料が高額
国際ファクタリングの手数料相場は、
信用調査費用:1万円前後
保証料:代金の1%~2%(毎月)
です。
L/Cの保証料率が1%以下であることを鑑みると、国際ファクタリングの手数料は割高であると言えるでしょう。
②信用調査に時間がかかる
信用調査は、通常依頼から3週間~1ヶ月程度かかります。
信用状(L/C)取引と比べると大きな差はありませんが、一括ファクタリングのように最短即日とはなりません。
急ぎの場合は注意しておくべきでしょう。
③取り扱っているのが大手金融機関のみ、選択肢が少ない
国際ファクタリングを取り扱っている企業は大手金融機関のみです。
現状は以下の4社のみで、サービス内容を比較しづらいという難があります。
寡占状況にあるため、手数料も安くなりづらいというのが現状です。
国際ファクタリングのまとめ
国際ファクタリングは輸出企業向けのファクタリングで、「代金回収にかかわるリスクヘッジ」と「輸入企業の信用調査」を目的に行うファクタリングサービスです。
現行の信用状(L/C)取引に比べると、スピード・手間がかからないといったメリットはありますが、手数料の高いさはデメリットと言えます。
そのため利用する際には、信用状取引と比較してから申し込みをするようにしましょう。
また国際ファクタリングは保証という意味合いが強いファクタリングです。
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