「ファクタリング」と「売掛債権担保融資」は、それぞれ似通った点のある資金調達手法です。

どちらも、売掛債権を利用して資金調達を行うという点では同じだからです。

ただ、両者はやり方も違えば、結果として得られるメリットも違ってきます。

得られるメリットが違うと言うことは、それぞれおすすめできる状況も変わってくるのです。

そこで、本記事では両者の違いや、それぞれをおすすめする状況を解説。

2つのやり方の違いが知りたい!」

「自社でどっちを使えば良いかわからない!」

という方に向けて、わかりやすくまとめました。

目次

ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)の違い

2つのアプリを比較している画像

両者の違いを端的に表すと、以下のようになります。

  • 売掛債権を「買い取ってもらう」のがファクタリング
  • 売掛債権を「担保にして融資を受ける」のは売掛債権担保融資(ABL)

勘違いしている方も多いのですが、ファクタリングは融資ではありません。

ファクタリングは、売掛債権を譲渡して売掛金を入金して貰う手法です。

したがって、ABLとはその役割からして大幅に異なります。

そうした両者の違いを表で表すと、以下のような点が浮かび上がってきます。

似たようなやり方ながら、実情は大きく違います。

続いて、ここから得られるメリット・デメリットがどのようなものなのかを見ていきましょう。

売掛債権を売却(ファクタリング)する4つのメリット

コインを階段状に積んでいる画像

売掛債権をファクタリングするメリットは、以下の通りです。

  • 調達スピードが非常に早い
  • 売掛先への通知が必要ない
  • 負債に計上されない(バランスシートのスリム化)
  • 不渡りリスクがない

それでは、順に見ていきましょう。

1.調達スピードが非常に早い

調達スピードの速さは、売掛先の審査が包括的に行われるABLより圧倒的に早いです。

これは、買い取る債権の売掛先が倒産することなく、無事に回収できるかどうかを判断するだけで済むためです。

一方、ABLの場合は、自社の与信もそうですが、依頼者の取引先をすべて審査する必要があります。

とにかく数日以内に資金を調達したいという場合は、ABLは選択肢には入らないでしょう。

2.売掛先への通知が必要ない

ファクタリングには、2社間と3社間の2種類があります。

このうち、2社間ファクタリングは、売掛先に通知することなくファクタリングを実施する手法です。

これは、売掛先への通知の代わりに、法務省に対し債権譲渡登記を行うことでも成立することを利用したビジネスモデルといえます。

現実問題、取引先が大手企業の場合、なかなか債権譲渡の理解が得られにくいことがあります。

そうした状況でも、確実に実施できるのはファクタリングの強みといえるでしょう。

3.負債に計上されない(バランスシートのスリム化)

前述したとおり、ファクタリングは融資ではありません。

会計上でもこれは同様で、ファクタリングで得たお金は負債として計上されないというメリットがあるのです。

詳しい内容はファクタリングの仕訳方法を解説を確認してほしいのですが、これにより後々の会社評価が上がる効果があります。

加えて、融資枠を使わずに調達できるというのもメリット。

「大口の契約が取れたが、手元資金がなく人材や資材が準備できない」

など、スポットで大きめの資金調達が必要かつ、乗り切れば資金繰りが大きく改善するという状況で役立つでしょう。

4.不渡りリスクがない

一度業者に買い取って貰った債権は、基本的にノンリコース(償還請求権なし)の契約となります。

これは、「もし不渡りになっても損害は業者側が負う」というもの。

したがって、リスク回避としてもファクタリングは有効な手段だといえます。

これがABLや手形割引といった手法の場合、不渡りリスクはこちらが負わなくてはなりません。

こうした点でも、ファクタリングが独自の立ち位置だということが伺えます。

上記の4つは、ファクタリングのメリットとしてよく述べられます。

ただ、融資と比べて特異であるからこそ、融資よりも一概に便利と言い切れる手法ではありません。

続いて、売掛債権担保融資のメリットを見ていきましょう。

売掛債権担保融資を受ける4つのメリット

デスク上にファイナンスの手順をメモ書きしている画像

売掛債権担保融資(ABL)のメリットは、以下のとおりです。

  • 通常の融資より審査にある程度通りやすい
  • 利息の分割支払いが可能
  • 利息が低くなりやすい
  • 多くの企業との安定した取引実績があると評価されやすい

それでは、順に見ていきましょう。

1.通常の融資より審査にある程度通りやすい

まず、債権を担保にすることで、不動産担保と同じく融資交渉を有利に進めやすくなります。

もちろん、債権の与信や自社の状況などある程度安定していることが条件ではありますが、比較的通りやすいです。

加えて、近年では銀行をはじめサービス提供元は日々増えてきています。

選択肢が広がり、今後さらに使いやすくなるでしょう。

2.利息の分割支払いが可能

融資なので、利息の分割支払いで返済可能です。

一方でファクタリングは、売掛金の支払期日に手数料を一括で支払わなくてはなりません。

(分割支払いにすると、貸金とほぼ変わらない形態になり営業が難しくなるため)

ですから、調達した資金で長期的にキャッシュフローを改善したい場合は、ABLのような融資を利用するのが一般的。

そもそも長期的に経営再建を図る場合、ファクタリングでは解決できないケースも少なくないのです。

3.利息が低くなりやすい

ファクタリングは、債権によっては20%を超える手数料を取られることも珍しくありません。

一方で、ABLの場合はどれだけ高くなっても、利息制限法を超えることはないでしょう。

また、手数料相場も10%を超えておらず、基本的には低い手数料で融資が実行されます。

4.多くの中小企業との取引実績が評価されやすい

ABLは、大手企業1社との取引実績よりも、中小企業何社との安定した取引実績があるほうが評価されます。

単一の債権ではなく、会社が取引しているすべての会社が審査の対象となるためです。

したがって、誠実な取引を長期にわたって続けられているのであれば、融資をする側の評価も高くなりやすいです。

ですから、国・自治体や大手と取引していなくても、ABLは利用しやすい融資なのです。

このように、ABLは融資の基本的なメリットを備えつつ、融資よりも良い条件で利用しやすいということがわかります。

続いて、どうやって2つを使い分けるかを説明していきましょう。

ファクタリングと売掛債権担保融資、どう使い分けるべき?

デバイスや手段を使い分けている画像

2つの方法が持つメリットを照らし合わせると、どうやらこの2つは状況に応じて使い分けた方がいいということがわかります。

続いて、ファクタリングとABL、それぞれをおすすめする状況について解説していきましょう。

ファクタリングをおすすめする5つの状況

ファクタリングをおすすめする状況は、以下のとおりです。

  • 数ヶ月後に資金繰り改善の見込みがある
  • 数百万円程度の小口資金をすばやく調達したい
  • 売掛先の理解が得られる
  • 持っている債権の与信が高い
  • 負債を増やしたくない

それでは、順に見ていきましょう。

1.数ヶ月後に資金繰り改善の見込みがある

先ほども触れましたが、ファクタリングがもっとも輝く状況は「大口案件などのチャンス」です。

ここをしのげば翌々月あたりには返せるという見込みがあるのであれば、融資を利用する必要はあまりありません。

それなら、負債に計上されず資金を調達できるファクタリングのほうがメリットは大きくなります。

加えて、銀行融資を受けられる見込みがない状況であれば、ファクタリングを利用するほかないでしょう。

2.数百万円程度の小口資金をすばやく調達したい

ファクタリングのボリュームゾーンとしては、だいたい150万円~300万円程度の現金化がもっとも多いです。

数百万円程度の小口資金を調達したいという状況であれば、借り入れよりもファクタリングのほうが手っ取り早いでしょう。

3.売掛先の理解が得られる

売掛先の理解が得られ、2社間ではなく3社間ファクタリングが利用できる状況なら、ファクタリングのメリットは大きくなります。

3社間ファクタリングは、業者側が負うリスクが少ないため、1.5%~7%程度の手数料で実行できるためです。

売掛金の金額にもよりますが、手数料面を見て、ファクタリングを必要に応じて実行するとよいでしょう。

4.持っている債権の与信が高い

ファクタリングを検討する上では「手持ちの債権がどのような債権か」ということに注目しましょう。

たとえば、以下のような債権であれば、手数料は安くなります。

  • これまでに安定した入金実績がある
  • 売掛先が国・自治体など不渡りリスクがゼロに近い
  • 債権の金額が大きい

特に、建設業・サービス業などはこの3つを満たした債権も珍しくありません。

ですから、自分の債権はファクタリングに向くのかどうか、というところもチェックすると効果的に利用できます。

5.負債を増やしたくない

先ほど説明したとおり、ファクタリングによって負債が増えることはありません。

それどころか、純資産利益率が伸びるため、会社の評価や融資の際の印象は良くなります。

会計上の戦略として、ファクタリングを行うのが望ましいのであれば、積極的に利用していくと良いでしょう。

このように、5つのケースではファクタリングを行ったほうが資金繰り改善に繋がりやすいです。

一方で、売掛債権担保融資(ABL)をおすすめする状況とはどんなケースでしょうか?

売掛債権担保融資をおすすめする4つの状況

売掛債権担保融資(ABL)をおすすめする状況は、以下のとおりです。

  • 資金繰りを長期的に改善させたい
  • 複数企業との安定した取引実績がある
  • 自社の与信はある程度高い
  • 大口の資金調達をしたい

それでは、順に見ていきましょう。

1.資金繰りを長期的に改善させたい

大口案件を抱えているわけではなく、単純に経営が苦しい場合。

このような状況では、ファクタリングは「その場しのぎ」にしかならないケースも多いです。

さらに悪いことに、その場しのぎでファクタリングしてしまった場合、次月も資金が足りずファクタリングを行わなければならないケースもあります。

ですから、長期的にキャッシュフローを改善したい場合は、ABLのような融資を受けた方が良い方向に行きやすいです。

2.複数企業との安定した取引実績がある

単一の取引先が経営に占める割合が多くなく、多くの企業と安定して取引を続けている実績がある場合。

このようなケースでは、ABLの審査を受けると良い返事が貰える場合が多いです。

3.自社の与信がある程度高い

赤字経営・税金滞納状態ではなく、融資も受けられそうな状況であれば、ABLは効果的です。

上で紹介した長期的な取引実績がある状況と合わせれば、より有利な条件で資金調達できるでしょう。

4.大口の資金調達をしたい

融資枠を使ってでも資金調達が必要で、売掛金より多くの金額を調達したい場合。

ファクタリングでは、どうやっても売掛金以上の額は調達できません。

こうした状況では、融資、あるいはABLを利用するのがもっともポピュラーで効果的です。

このような状況では、ファクタリングよりもABLのほうが優れています。

特に、不動産のような固定資産がない場合、債権を担保にするABLは比較的利用しやすくおすすめです。

では、最後にABLを受ける上で注意しておきたいことを軽く説明します。

売掛債権担保融資を受けるうえでの5つの注意点

コルクボードに電球マークのメモが貼り付けられている画像

ABLを受ける際は、以下の事項を把握しておきましょう。

  • 現在持っている債権をすべて担保にする必要があることがほとんど
  • 継続して取引しているなど安定した実績が必要
  • 自社の与信もある程度見られる
  • 融資実行後も、定期的に検査が行われる
  • 別途、支払い資金を用意する必要がある

それでは、順に説明していきます。

1.現在持っている債権をすべて担保にする必要があることがほとんど

ファクタリングとは異なり、現在取引している債権はすべて審査対象になります。

2.継続して取引しているなど安定した実績が必要

ABLの審査時は、取引相手が大手や国であるかどうかよりも取引実績を重要視されます。

起業して間もないなど、取引実績をあまり積めていない場合は、評価があまり良くなりにくいのがネックといえます。

3.自社の与信もある程度見られる

ファクタリングとは違い、自社の与信もある程度チェックされます。

4.融資実行後も、定期的に検査が行われる

ファクタリングは、買取を実行した後、支払期日に売掛金が入金されれば取引は終了します。

ですが、ABLの場合は融資を実行した後も債権が担保としての価値を保持できるかどうかを検査されます。

全額返済を終えるまでは、検査が続くことに注意が必要です。

5.別途、支払い資金を用意する必要がある

ファクタリングは、売掛金から手数料が引かれますので、返済資金を用意する必要はありません。

ABLは、融資ですので当然ながら利息が上乗せされ、返済資金も用意が必要です。

まとめ

スーツを着た男性が袖口を触っている画像

ファクタリングとABLは、以下のような違いがあります。

  • 負債に計上されないファクタリング、されるABL
  • 単一の債権を売却するファクタリング、すべての債権を担保に融資を受けるABL
  • 自社の与信が重視されないファクタリング、されるABL
  • 債権調達のスピードが早いファクタリング、早くないABL
  • 長期的な資金繰り改善には向かないファクタリング、改善に向くABL

まとめると、

  • 素早く、短期的に資金調達をしたいならファクタリング
  • 時間がかかっても問題なく、長期的に資金繰り改善をしたいならABL

と捉えることができそうです。

それぞれ、良いところも悪いところもありますので、特徴をつかんで経営改善に役立てていきましょう。

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