BNPLとは「Buy Now Pay Later」の略で「今買って後で払う」という支払い方法です。
これだけ聞くと「日本でもお馴染みの後払い決済と同じでは?」と思う人も多いかもしれませんが、BNPLは従来の後払い決済とは異なる方法として注目されています。
BNPLがなぜ普及しているのか、従来の後払い決済との違いとともに解説していきます。
目次
BNPL(Buy Now Pay Later)とは?
BNPLとは後払いの支払い方法ですので、従来の後払いサービスとの違いを理解していない人も少なくありません。
しかしBNPLは従来の決済方法よりも利用者にとってメリットがあります。
後払い決済との違いをBNPLの仕組みとともに詳しく解説していきます。
BNPLと後払い決済の違い
BNPL(Buy Now Pay Later)の特徴は、以下の2点に集約されます。
- 手数料無料で分割払いが可能
- 手数料は加盟店が負担
従来の後払い決済では、支払いを翌月末まで延期することで資金繰りに余裕を持たせることが可能でしたが、支払回数は一括払いのみに限定されていました。
一方、BNPLでは原則として手数料無料で分割払いを行うことができます。
さらに、従来の後払い決済では手数料が発生し、その負担は利用者に帰属していましたが、BNPLでは手数料は加盟店が負担するため、利用者には追加費用が発生しません。
クレジットカードの場合も分割払いが可能であり、決済手数料は加盟店が負担します。
この点において、BNPLはクレジットカードを保有していない人々にも、クレジットカードで購入する際と同等の利便性を提供し、手軽に買い物を楽しむことができるメリットをもたらします。
BNPLの仕組み
ネットショッピングにおけるBNPLでの決済プロセスは、次のように進行します。
- 消費者が商品を選択し、支払い方法としてBNPLを選ぶ
- BNPL事業者が小売店へ代金を立て替え
- 小売店がBNPL事業者へ手数料を支払う
- 小売店が消費者へ商品を発送
- 消費者がBNPL事業者に代金を一括、または分割で支払う
消費者が商品を購入し、BNPLを支払い方法として選択した場合、BNPL事業者は小売店に代金を立て替え、その後、消費者は商品受領後にBNPL事業者に対して代金を支払います。
このシステムにより、消費者は手元に資金がない場合でも、一括または分割での支払いが可能となります。
同時に、小売店は代金を確実に回収できるというメリットがあります。
これは、クレジットカードによる決済と同様の利便性を提供するものです。
海外でのBNPLサービスの普及について
新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、欧米を中心としたネット市場の拡大と共に、以下のBNPLサービスが注目を集めています。
- アメリカのAffirm(アファーム)
- オーストラリアのAfterPay(アフターペイ)
- スウェーデンのKlarna(クラーナ)
これらのサービスは、クレジットカードのように事前に契約する必要なく、アプリをスマートフォンにインストールするだけで即座に決済が可能です。
また、BNPLをサポートするネットショップでは、追加の契約なしに利用できる手軽さがあります。
2020年7月にCardifyが発表した調査によると、アメリカにおけるBNPLの2020年上半期の流通取引総額は、前年同期比で197%増加したと報告されています。
このデータは欧米におけるBNPLの急速な普及を示しています。
国内の代表的なBNPLサービス
欧米ではかなりメジャーになったBNPLですが、日本においては「使ったことがない」「初めて聞いた」という方も多いのではないでしょうか?_
実は日本でもBNPLサービスの普及が始まっています。
主なBNPLサービスとして次の3つを挙げることができます。
- Paidy(ペイディ)
- Atome(アトミー)
- メルペイスマート払い
それぞれのサービスの特徴について詳しく解説していきます。
Paidy(ペイディ)
Paidy(ペイディ)はスマホだけで後払いができるBNPLです。
事前に登録しなくても、ネットショップの決済画面の支払方法で「あと払い(ペイディ)」を選択するだけで買い物できます。
あとはメールやSMSで届く支払情報を使用してコンビニなどで支払いをするだけです。
またPaidyは手数料無料で3回後払いを利用できます。
また最短5分でVISAの国際ブランドのついたPaidyカードを発行でき、リアルカードも発行可能です。
リアルカードを発行すれば実店舗でもPaidyでの買い物が可能です。
また「ペイディあと払いプランApple専用」というプランも始め、Apple製品を最大36回まで手数料無料で購入できます。
Atome(アトミー)
Atome(アトミー)はシンガポールの後払い決済サービス事業者でアジア最大級のBNPLサービスです。
Atomeも手数料無料で3回までの分割払いが可能です。
Atomeで利用した分はクレジットカード、デビットカード払い、コンビニ店頭払い、銀行口座振替によって支払わなければならないため事前に登録が必要になります。
Paidyのように事前登録なしでスマホのみで買い物できるわけではないので注意しましょう。
メルペイスマート払い
QRコード決済サービスであるメルペイに実装された分割サービスです。
購入時に「メルペイスマート払い」を選択することで、分割にすることもできますし、利用分を後から分割へ設定することもできます。
毎月の支払い金額は「元金+手数料合計で最低1,000円」から利用者が選択できますが、利用残高に応じて最低支払金額は次のように異なります。
利用残高 | 最低支払金額 |
---|---|
1〜999円 | 利用残高 |
1,000〜37,999円 | 1,000円 |
38,000 〜 75,999円 | 2,000円 |
76,000 〜 114,999円 | 3,000円 |
115,000 〜 152,999円 | 4,000円 |
153,000 〜 191,999円 | 5,000円 |
192,000 〜 229,999円 | 6,000円 |
230,000 〜 268,999円 | 7,000円 |
269,000 〜 309,999円 | 8,000円 |
310,000 〜 339,999円 | 9,000円 |
340,000 〜 379,999円 | 10,000円 |
380,000 〜 419,999円 | 11,000円 |
420,000 〜 459,999円 | 12,000円 |
460,000 〜 500,000円 | 13,000円 |
なお、メルペイスマート払いは分割払いはできますが、手数料が実質年率15%かかります。
この点、分割手数料無料のBNPLとは異なるので、厳密な意味でのBNPLとは異なるという点に注意しましょう。
BNPLの支払方法
BNPLで利用した代金を支払う方法は主に次の5つです。
- コンビニ払い
- 銀行振込
- 口座振替
- クレジットカード
- デビットカード
最もオーソドックスな方法がスマホやメールで届く支払情報や郵送で届く払込用紙使用してコンビニで支払う方法です。
銀行口座やクレジットカードを使用しないので、口座やクレジットカードを持っていない人でも分割や後払いができます。
このほか、指定した銀行へ振り込みをしたり、あらかじめ支払用口座を登録しておいた登録口座から代金を引き落とす方法もあります。
また、利用代金をクレジットカードやデビットカードで引き落とす方法もありますが、そもそもクレジットカードやデビットカードを持っているのであればBNPLを利用するメリットはあまりないと言えるかもしれません。
BNPLを利用できる場所
BNPLを利用できる場所は主に次の2つです。
- ネットショッピングの加盟店
- 実店舗の加盟店
BNPLは基本的には加盟店でしか利用できず、どこでも使えるわけではありません。
それぞれの使い方を解説していきます。
ネットショッピングの加盟店
BNPLの基本的な利用場所がネットショップです。
ネットショップの加盟店で、支払方法を「後払い決済」を選択すると、事前に登録することなく後払いを利用できます。
また、Paidyのようにスマホ上にクレジットカードを作成することで、当該クレジットカードの国際ブランドに対応している店舗ではどこでも買い物ができます。
実店舗の加盟店
BNPLは実店舗でも利用できる場合があります。
メルペイスマート払いはメルペイが利用できる実店舗であれば、どこでも利用でき、利用代金を後から分割にすることが可能です。
また、Paidyはリアルカードを発行すればVISAカードが発行されるので、VISA加盟店であればどの実店舗でもPaidyで決済できます。
BNPLの5つのメリット
BNPLには主に次の5つのメリットがあります。
- 原則として審査がない
- クレジットカードなしでも分割払いできる
- 手数料は加盟店負担
- クレジットカードよりも使いすぎる心配がない
- 子供や若年層でも利用できる
以下より順番に解説していきます。
原則として審査がない
BNPLには原則的に審査がありません。
クレジットカードや信販会社のローンなどは審査があるので、個人信用情報に問題がある人は審査に通過できない可能性が高いです。
しかしBNPLには審査がないので、過去の債務整理などによって信用情報に問題がある人でも利用できます。
また決済方法の中には「必要な情報はメールアドレスと電話番号だけ」というところも多いので、ネットショッピングで個人情報を入力することに抵抗がある人も安心です。
クレジットカードなしでも分割払いできる
BNPLを利用すればクレジットカードを持っていなくても分割払いができます。
従来、ショッピングローンを利用する以外の方法で買い物の代金を分割にする方法はクレジットカードを使用するしかありませんでした。
そのためクレジットカードを保有していない人は原則として現金で一括払いが唯一の支払い方法となっています。
しかし、BNPLであればクレジットカードを持っていなくても分割払いを選択できます。
1回での支払いが難しい高価な買い物もBNPLなら手が届くでしょう。
手数料は加盟店負担
BNPLは利用手数料も分割手数料も、原則として加盟店が負担するので消費者の負担はありません。
クレジットカードでも3回払い以上は15%程度の分割手数料が発生するので、BNPLで分割手数料がかからないという点は大きなメリットです。
分割のコストを気にすることなく、支払方法を分割にできるのはクレジットカード決済と比較した場合の、BNPLの大きなメリットだと言えます。
クレジットカードよりも使いすぎる心配がない
BNPLは限度額が設定されているケースが多いですが、たいていの場合、限度額は数万円程度です。
クレジットカードのように数十万円〜100万円以上の高額な限度額が設定されるわけではないので、クレジットカードのように使いすぎてしまう心配はありません。
後払いできると言っても、数万円程度ですので、クレジットカードのように「支払日に支払うことができずにカード破産してしまう」などの心配は無用です。
子供や若年層でも利用できる
BNPLは利用できる金額が数万円程度の少額ですので、子供や若年層でも安心して利用できます。
子供にクレジットカードを持たせておくことは使いすぎが懸念されますが、BNPLであれば使いすぎをそこまで心配する必要はありません。
また、信用上の問題からクレジットカードを持てない若者にも利用が広がっています。
BNPLはそこまで高額な買い物をする必要がない若年層の間で広がりを見せていくと予想されています。
BNPLのデメリット
BNPLには次の4つのデメリットもあるので十分に注意しなければなりません。
- 補償がついていない
- 利用可能額が少ない
- 使える店舗が限られている
- 導入企業のリスクが高い
BNPLには利用者だけでなく導入企業にもデメリットがあります。
BNPLの4つのデメリットについて詳しく解説していきます。
補償がついていない
BNPLにはクレジットカードのように補償がついていません。
クレジットカードでは海外・国内旅行傷害補償などの補償がついており、クレジットカードで購入したものが万が一破損した場合には補償を受けられる「ショッピング保険」も付帯されているものが多くなっています。
しかしBNPLには原則的に付帯保険がないので、旅行先のケガで補償を受けられないのはもちろん、購入したものが破損した場合も自己責負担となります。
利用可能額が少ない
BNPLは利用可能額が数万円程度と多くはありません。
基本的には与信審査なしで利用できるだけに、審査なしでも事業者のリスクがない程度の金額しか使えない設定となっています。
クレジットカードのように数十万円以上する高額な決済ができないので、使える場面が限られてしまうのはデメリットです。
使える店舗が限られている
欧米ではかなり普及しているBNPLですが、日本ではそれほど普及しているわけではありません。
日本では一部のネットショッピングしか利用できないので、クレジットカードのように「どの店でも利用できる」というほどの利便性はないのが実情です。
とても便利な決済方法ですが、使いたいと思った場所では利用できるとは限らないという点に注意しましょう。
導入企業のリスクが高い
BNPLがそれほど普及していない背景が導入企業のリスクです。BNPLの利用手数料は基本的には導入店舗側で負担します。
BNPLで販売すればするほど店舗のコストは大きくなるので、店舗側が導入に対して後ろ向きになる傾向があります。
また、事業者側もクレジットカードのように個人信用情報を確認した上での審査をするわけではないので、貸倒のリスクは高くなります。
導入企業にとっても事業者にとってもリスクが高いので、導入はコストも考慮して慎重に考えなければなりません。
BNPLについてのまとめ情報
BNPLは後払いの決済方法ですが、利用手数料や分割手数料の利用者負担がないという点が特徴です。
クレジットカードを持っていない人や、信用上の問題で持てない人でもBNPLを利用すれば後払いや分割払いを利用できます。
ただし、利用限度額が小さく使える店舗が少ないのがデメリットです。
利用の際には利用店舗や利用金額を事前に確認し、無理なく払えるかを慎重に検討した上で活用しましょう。
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